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ねじまき鳥クロニクル〈第3部〉鳥刺し男編 (新潮文庫)

価格: ¥882
カテゴリ: 文庫
ブランド: 新潮社
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歴史に踏み込み 改めて現実社会へと歩み始める ★★★★★
3巻では新たに、ナツメグとシナモンの姉弟が登場し、あの「1Q84」でも出てくる「牛河」さんも登場します。それから、1巻で出てきた、あの残酷な「皮むきロシア人」も登場するし、井戸での体験もクライマックスを迎えます。この作品は1、2巻がまず刊行され、作者の村上春樹は、それで終わりにもできたのですが、謎解き編であり、1、2巻の成長版として3巻を書いたようです。1、2巻を読んだ読者にとって、いろんな伏線が集約され、面白いです。物語も一回り大きくなって現れます。やはりこの3巻は書かれていてよかったと思います。
現実と言うのは不条理で、混沌としていて、ときには戦争など圧倒的な暴力が個人の人生を飲み込んでしまいます。できれば、そんな社会や歴史とかかわることなく、自分の真実の道を進みたいのですが、主人公は、結局、愛する妻を探しに、ノモンハンやシベリア抑留などの歴史の中に踏み込んでいきます。
この小説を一つの焦点に、作者は、次は歴史ではなく、あのオーム事件や阪神大震災という現実の世界におきた大事件と向き合うことになります。
時代の遭難から脱するための漕ぎ手 ★★★★★
僕たちはこれだけ世の中の不穏な状況とか未来への不安とかを目の前にしても、やっぱりどこか世界は首尾一貫したものだと思ってるし、そう思おうとしているのかもしれない。
この作品はその「一貫性」に対して真っ向からの疑問を投げかけている。

システム側が我々に提示する「経済的有効性」は戦後〜高度経済成長期にまでかけて実務的な規範として敷衍するのに強力なテクスチャーとして機能していた。

だがバブルがはじけた今もシステム側から提示されるバブリーなメンタリティは衰えず、「経済的有効性」以外の哲学、精神性は生み出されることはあまりなかったといえる。
このメタファーこそが「綿谷ノボル」の存在である。

村上は「海の真ん中で遭難して方向を失ったときに、チカラのある熟練したこぎ手が揃っていても無意味」と書いている。
つまり、必要なのは遭難からどうやって脱するか、必死で考え想像する。
それこそが今の時代に必要な「こぎ手」であると思うし、僕たちが獲得しなきゃいけない「規範」なんじゃないか。
1年5か月間。 ★★☆☆☆
1年5か月もの間、ただ奥さんを取り戻すことのみを望みつつ、
ぼんやりと日々を過ごす主人公の意志の強さには感服した。
オカルト要素の強い話であるにも関わらず、
「超自然的な力で一気に解決!」という流れにならなかったのは良いと思う。
モンゴルやロシアの話など、部分的に見れば面白い話もあった。

然し、全体を見渡すと全く意味が分からなかった。
小理屈と仄めかしの連続で語られる登場人物らの人生観が、
最終的に有機的につながり合って意味をなしているように感じられなかった。

私個人はこの作者の語り口が特別好きな訳ではないので、
「意味不明だけど雰囲気は良かったよ!」的な感想に逃げることができないのも辛い。
詩として読むには少々長いし、レトリックも普通だし。
法則性を持ったカオス、レイヤーとリンク ★★★★★
とにかく物凄い作品だ。

カオスが溢れる。
その混沌は徐々に法則性をもちはじめ、
やがて幾重にも重なるレイヤーとなり、
レイヤーに横たわるパーツと、別のレイヤーに横たわるパーツが
リンクしたかと思うと、レイヤーが持つ時空の境界を全く無視し、
いつの間にかそれらは同一化している。

人間の持つ深淵という、やがて何者かへと変貌を遂げる運命を背負ったカオスを
ここまで描ききった作品は今後なかなか現れることはないだろう。

人間にとっての本当の救済とは、何なのだろうか。

それはもしかしたら死という至極単純な現象かもしれない。
それはもしかしたら愛という至極使い古された表現かもしれない。

自分の頭でものを考えられる全ての人間に読んでほしい一冊。
大好きな村上作品だけど ★★★☆☆
「海辺のカフカ」や「ノルウェイの森」は,一気に読んでしまう作品。

だけど,これは何度も立ち止まりながら,時間をあけて再開してようやく読み終えた作品。

シナモンやクレタなど魅力的な登場人物はでてくるけど,やっぱり「皮剥ぎ」が
強烈すぎる。3部読み終えても,そこしか残らないぐらいインパクトが強い。

村上春樹がこんなに強烈に残酷な描写も書くのか驚いてしまった。
そこが彼の奥深さであり,魅力なんだと思うけれども。