日本の近代化の諸問題の概説を兼ねた参考書
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京都大学さんが、ここ数年、古い明治の文章から問題を出さなく立ったので、「近代文語文」を大学入試で出題しているのは、現時点では、一橋大学と、上智大学・早稲田大学だけとなりました。で、京都大学の『近代文語文文例集』(駿台文庫)が絶版となって、『近代文語文問題演習』となって、新しくお目見えしました。
いわゆる学習参考書ではありますが、十四の問題を考えていくことで、日本の近代が直面した様々な問題を、一通り概観することが出来るような、文章の選択となっています。
「言葉」と「論理展開」(言い換えとか、対比とか、具体例と抽象とか、論とその根拠とか)の学習だけで、「国語」は分かるというような、学習の方法論が、巷にはあふれていますが、「文章」が、その時代に、その書き手の置かれた個別の状況で生み出された、苦悩と喜びの証言であるのなら、「読む」とは、その「文章」を、過不足なく追体験して、「書き手」とともに、一つ一つの問題を、考えているしかないはずです。
「いまどきは、そんな受験勉強は、流行らない」と言われそうですが、その流行らない「近代文語文」を、問題に出す大学だからこそ、小手先の勉強は通用しないので、地道に取り組んでいくしかないのです。
「書き手について」「出典の解説」「現代語訳」「要約」「問題の解説」が、出題の文章の何倍もの分量で説明されています。駿台さんの他の参考書と同じで、一色刷りですが、内容は充実したものとなっています。
「べし」が、近代文語文で多用される理由とか、「む」はあまり使われない理由とかも、「文法のポイント」として説明されています。
現時点では、「近代文語文」について解説された唯一の参考書です。類書には、駿台さんの青本の、『一橋大学』もあります。