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一枚のディスクに―レコード・プロデューサーの仕事

価格: ¥2,100
カテゴリ: 単行本
ブランド: 春秋社
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セッション録音の意義を解説 ★★★★★
最近発売された「巨匠たちの録音現場 カラヤン、グールドとレコードプロデューサー」と間違えて買った本である。しかしこれはこれで示唆に富む良書であった。

もう30年近く前、クラシック音楽を聴き始めた頃、レコードの演奏が実は細かい編集を経た作品なのだと知って、私は大変落胆したものだ。このナイーヴな感情は直に薄れたものの、ついこの間もルビンシュタインが晩年にメータの指揮で弾いたブラームス・ピアノ協奏曲第一番第一楽章(ライヴ録音)の派手なミスタッチが、イスラエル・フィルの創立70周年記念ボックスセットできれいに修正されていたのを発見して複雑な気持ちになった。私はLPで聴き慣れていたこのミスタッチを聴きたさにCDをセットしたのに、一体誰が(本人でないことだけは間違いなかろう)代役を演じたのだろうか、と、若干の怒りとともに怪しんだのであった。

もちろん著者が論じているのは、こんな些末な「お化粧」の問題ではない。緻密な編集作業が、芸術的にみても、実はセッション録音のもっとも重要なポイントであることを本書は教えているのである。一方で、安易なライヴ録音に警鐘を鳴らし、録音芸術の衰退の大きな要因として挙げる。ここに書かれていることの一部は、コンサートで「聴衆とともに音楽を作ります」と無邪気に言ってのける音楽家には耳の痛い話だろうし、コンサート派音楽ファンには肯んじ得ない主張もあるだろう。しかし著者の考え方は恐らく、グールドのコンサートドロップアウトの思想に相通じると思われる。そしてレコード派の私はこれを概ね支持したいと思うのである。
「録音芸術作品」〜産みの苦しみと喜び、そして感動! ★★★★★
■ かつてはレコ−ド、今やCD。
その一枚のディスクに込められた熱くかつ真摯な音楽への思いが伝わってくる一冊です。

 著者が代表を勤めるカメラ−タ・トウキョウは、
日本の作曲家や演奏家による作品・演奏を積極的に取り上げており、
他のレ−ベルと一味違う特徴があります。
私の書棚に並ぶCDにもカメラ−タ発がそこそこのウェイトを占めています。
そんなこともあり、興味深く読み進むことができました。

■ ただ、一つ異論をはさむとすれば、オペラ作品の録音に関わるところ。
 いうまでもなくオペラは、他の音楽ジャンルと違い、
舞台装置、衣装などを含めた視覚的な要素が大切です。
そのため、その音楽を聞き取るには、
音だけでなく映像をも含めたマルチな複製技術が求められます。
今日的なツ−ルでいえば、CDよりもむしろDVD。
その結果としてライブ録音が主流にならざるを得ないのではないでしょうか。

 いずれにしても、
 私たちが音楽の感動を身近に味わうことを可能にさせてくれる大切な仕事。
 その現場からの熱いメッセ−ジに、ただただ感謝、感謝の一言です。