先の大戦は人類未曾有の大惨事であり、そこでの日本の役回りは極めて侵略的なものであって、私(評者)としてはそれは全体として肯定できるものではなく、また著者も同様の認識にあると思う。しかし、そこで実際に戦っていた将兵は、そうしたマクロの視点からだけでは見えてこない、さまざまな思いを抱いて戦い、また感じていたはずである。そのことは、戦後出版されたさまざまな戦記や手記を読んでもうかがえる。
戦いに実際に関わった個々人の思いを、漫画という表限手段を用いて、また半ばフィクションであり半ばノンフィクションであるというジャンルの利点を活かしてあらわしたのが、この『ザ・コクピット』である。同じジャンルの他の著者による作品の追随を許さない、極めて緊張感の高い作品が揃っている。