「疑惑」は、乗用車ごと海に落ちた夫婦の事件。妻には東京でホステスをしていた過去があり、夫との年齢差は15歳、しかも事故で多額の保険金を得ることになった。妻の犯罪だと疑う者が多いなか、マスコミも「悪女」による犯行だ、死刑にせよ、と煽る。一方、裁判で国選弁護人を引き受ける弁護士は、証拠の示す事実を丹念に考えることにより、実際に起こったことの証明を試みる。メディアなどで喧伝されるイメージにまどわされることなく、「見えているもの」をしっかりと見ることはムズカシイものだと痛感します。
「不運な名前--藤田組贋札事件」は、北海道行刑資料館(北海道央・空知支庁月形町、最寄駅は岩見沢)が舞台。資料館は、もとは「樺戸集治監」として利用されていた(流刑の重罪囚、刑期20年以上の罪をおかした者などを収監。明治14年設置・大正8年廃監)。展示場には、辞令や寄留戸籍簿などの関係文書やもとは職人だった囚人の作った品々が展示されている。日本画「観音図」を残した画工の囚人もいる。彼が紙幣偽造の罪でここに収監されたのは政治裁判故の冤罪ではないのか? 伊藤博文に命じられ赴任した役人・月形潔(そこで月形町なんですね)の任は、この監獄設置のほかにもあったのではないか? この疑問を、男女3人の会話形式で紐解いてくれます。
いずれも読みやすい分量にもかかわらず、いつどこで起こってもおかしくない事件だと考えさせられる2遍でした。