『沼の王の娘』は印象深い
★★★★☆
アンデルセン『沼の王の娘』は小学生のころに見たアニメ「アンデルセン物語」でも扱っていたので、印象が深く、もう一度読み直したいと思っていた。エジプトのお姫様が白鳥の羽を身にまとってヴァイキングの住む北欧へ病身の国王の病をいやす「花」を求めて3人でやってくる。ところが他の2人に意地悪されて羽を取られ戻れなくなる。そして沼に引き込まれる。しばらくして沼の底に住んでいたみにくいカエルの王とのあいだに娘が産まれる。それがヘルガである。ヘルガは沼の上に浮かび上がったところをコウノトリのお父さんにみつけられ、子どものいなかったヴァイキングのお母さんのところに運ばれる。コウノトリのお父さんとお母さんに見守られながらヘルガの物語が進行する。ヴァイキングのお母さんは娘を授かって喜ぶが、そのあと悲しみに襲われる。ヘルガは昼間はエジプトのお姫様だったお母さんの姿形でうつくしいが、乱暴で残忍なカエルの王の心を持っている。そして夜になると内面はお母さんのやさしい心で、外面はカエルの姿に変身してしまうのである。話をはしょると、エジプトの王を癒す花こそ、このヘルガだった、というストーリー。
あまりにも分かりやすい設定のキリスト教ベースの物語ではあるが、王族の尋常ではない悲劇性とコウノトリの庶民的なやりとりと夫婦愛が平行して進んでいく対比がうまいなーと思う。
夜、悲しい気持ちになると、この物語を思い出す。カエルの自分が泣いているのかなと。
2003-3-8記す