エッセイとして暇つぶしに
★★★★☆
何となくヘビーな本はちょっとダメというとき、時間の合間にさらっと読みたいとき、あるいは気分転換が必要で全然違うことに意識を持っていきたいとき。こんなときにお勧めのエッセイ集である。週刊新潮の連載ものの1年分だという。連載ものなので、どんなテーマだろうが必ずぴたっと同じページで話が完結するところが気持ちいい。
さて、渡辺淳一の書くエッセーだから自然と「男と女」に関することが多い。熟年夫婦に関する考察はまことに秀逸の一言であり、今から20年後の自分を想像させられる。男は基礎体力がないのだそうである。だから男はかっとなりやすいのだとも喝破する。
定年後の夫は、「粗大ゴミ」「粗大生ゴミ」「産業廃棄物」だという。もっともこれは氏の発言ではなく、「夫婦のありかたを考える会」のリーダーの発言らしいが、今から定年後に備え「廃棄物」呼ばわりだけは避けたいところである。
機内や車中で女性と隣り同士になったら「軽く近付いて軽く退く」ことが要諦だそうだ。確かに、「互いに黙り込んだまま何時間も一緒、というのはやはり不自然である」。
自分の健康法を聞かれて、「自分の躰を、とくに臓器を褒めてやること」とは、前にもどこかで読んだことがあるフレーズだが、これは使えると思った。早速やってみよう。