ユングが「アニマ」に喩え、H.ミラーが「最も魅力的な女性」と絶賛したことで知られる、一度読んだら誰もが忘れられない強烈な女性を描いた前作『洞窟の女王』から18年経って書かれた、正式な続編。彼女はこの他、未邦訳のふたつの作品にも登場しているが、時系列的にはこの作品が一番最後にくることになる。怒濤のその結末は読者自身の目で確かめられたい。
ひとりの男性への愛によって永遠の生命を保ち続けていた「彼女」の姿は、正に西洋的なすさまじい執着の象徴であるが、この続編では、仏教的な視点をアッシャの熱情から一歩離れたところに置くことによって、物語により広い、尽くし難い印象を獲得させることに成功している。仮初めの生を激しく生きることの意味がここにある。