かつてエラ・フィッツジェラルド、サラ・ヴォーン、カーメン・マクレエを称して、女性ジャズヴォーカルの御三家と呼んだ。それだけ、この3人は傑出していたということ。3人のなかでカーメンは一番年下のように思ってしまうけど、実はサラより2歳年上。最年少と勘違いするのは、デビューが遅かったから。なにしろカーメンは、30歳を過ぎての歌手デビューだったのである。
ビリー・ホリデイに可愛がられ、影響を強く受けた。スタンダードを歌うだけでなく、コンテンポラリーにも積極的に取り組んだ。1960年代以降は特にその感が強く、たとえば1971年にハリウッドのクラブ「ダンテ」に出演したときのライヴ盤である本作でも、ヘンリー・マンシーニやレオン・ラッセルの曲を歌っている。ジョー・パスやジミー・ロウズを含むコンボをバックに、歌もしゃべりも絶好調のカーメン。数ある彼女のライヴ盤中、これは飛び切りの内容だ。一部ピアノの弾き語りも披露する。未発表曲も追加した堂々の完全盤。(市川正二)
Joe Pass!
★★★★★
カーメン・マクレエ(vo)が1972年にリリースしたライブ音源。ジャズのスタンダードをシンプルな編成で歌いあげる名演で、初っぱなのサテン・ドールからアメリカ南部の香りがプンプンして、ジャズ・ボーカルのアルバムとしては珠玉の出来です。特に良いのがバックのジョー・パス(g)。元々、ソロ・ギターの名手ですが、ここでは歌心あるバッキングに徹していて、流石にデキる人は何をやっても上手ですな。
カーメンの最高傑作にしてジャズボーカル史上の大名盤。
★★★★★
カーメン・マクレエは実力の割りに評価されなかったジャズ・ミュージシャンの筆頭である。「エラ・サラ・カーメン」御三家の一角として知名度があるといえばあるが、アメリカではエラ・フィッツジェラルドほどの大衆的人気を博すことはなく、サラ・ヴォーンのような超大物扱いもされないまま亡くなった。しかし、声を大にして言いたい。カーメンこそは、ビリー・ホリデイ〜エラ〜サラに匹敵する、いやそれ以上の偉大な足跡を残したボーカル・ジャイアンツである。
他の3人とそれほど歳も違わないのに、カーメンがジャズ界で頭角を現したのは50年代に入ってから、と遅咲きだった。実質ナンバー1歌手になったのは60年代のことだ。60年代といえば、ジャズがピークを過ぎて衰退へ向った時期である。それもまたカーメンにとって不幸なことだったと言わざるをえない。ジャズ界全体が地盤沈下し、ビリーが亡くなり、エラはマンネリに陥り、サラが不調にもがく、そんな時代に一人でジャズ・ボーカルを引っ張っていたのがカーメン・マクレエだった。(強いて挙げれば60年代、ほかに活躍した歌手には、美人でポップス寄りのナンシー・ウィルソン、公民権運動の顔でもありジャンルを超えたアーティスト、ニーナ・シモンがいる)
50年代のカーメンは、暖かいビロードのような声で、大袈裟なフェイクはせず、繊細で抑揚を抑えた表現を用いて傑作・快作を連発した。現在聴いても、『ブック・オブ・バラード』をはじめとするそれらの作品の完成度は本当に素晴らしい。ジャズ・ボーカルの頂点を示す作品群だと思う。60年代に入ると、声が太くなり、より説得力を増す堂々とした歌い方に変化、レパートリーにポピュラーも多くなり、カーメン独特のトーキング・スタイルを確立した。
本作『グレート・アメリカン・ソングブック』は、そうした50年代、60年代を経て、カーメンがキャリアの頂点を迎えようとした70年代初頭の録音である。ジミー・ロウルズ(p)、ジョー・パス(g)などの名手を従えて、バラエティ豊かなライターたちの名曲を自由自在に歌い、曲の合間には観衆に楽しく語るカーメン・マクレエの姿をありのままに捉えた本作は、ジャズ史上の名盤に違いないと確信する。「Satin Doll」「Close To You」での上手さは唸るほど。しかしアルバムの白眉は、ロック・アーティスト、レオン・ラッセルの「A Song For You」だろう。まるで彼女のために書かれたような曲。当時50歳になったカーメンの人生経験からにじみ出る深い哀感に感動し、落涙しそうになる。同曲は他の歌手が多くカバーしているし、カーメンも何度も録音しているが、このバージョンが圧倒的にいい。褒める言葉が見つからないほど端正で感動的な歌唱だ。
カーメンの素晴らしさは、「歌詞の解釈」が優れている点につきる。ピアニストの経験もある彼女は、他のどのシンガーよりもジャズ・イディオムを熟知していた。エラやサラの成功を横目で見つつ、涙した不遇の時代。脚光を浴びてからも中途半端な名声しか得られなかった生涯。海千山千の音楽界を逞しくも悲劇的に渡り歩いた大姉御が、歌詞を深く時にシニカルに解釈し、正しい音楽的知識から絶妙に表現したジャズ曲、特にバラードを聴いていると、芝居の一幕を観ているような、短編小説を読んでいるような気分にさせられる。カーメンの陰影深いバラードは、(ファンには悪いが)通り一遍で薄っぺらいエラのバラードや、曲によってバラつきが多く、しばしば回りくどいサラのバラードとは、明らかに一線を画す。
カーメンの影響を受けた歌手は多くいるが、アフリカ系よりも白人の、それも知性派歌手が多いというのが彼女らしい。現在、人気ナンバー1ジャズ歌手のダイアナ・クラール、すでに大御所として君臨するダイアン・シュアー、玄人受けする高踏的なキャロル・スローン、いずれもカーメンから大きな影響を認められるし、カーメンを尊敬していると明言している。
最後に、60年代同じレーベルCBSに所属していた帝王マイルス・デイビスが残した、日本では意外と知られていないエピソードを記そう。ある日、NYの街角で大きなビルボードの看板がマイルスの目に入った。そこには「ジャズの女王、エラ・フィッツジェラルド…」と書かれていた。それを見るなり彼が言った。「エラが女王だなんて、冗談だろ。カーメンはどうなるんだ」
マスターテープに原因?
★★★☆☆
大好きなアルバム。初めてジャズボーカルに魅了されたアルバム。
その完全版であり、リマスターとくれば、どれだけの期待を込めて買ったことか!
ジョー・パスの名前をカーメンがコールして、ギターソロになる"Satin Doll"
いいよね〜!
そして、おまちかね、あの名曲の超絶唱"A Song For You"
これが聞きたくて買った様なもんです!!
ん!?
ん!?? なんだ今の?
曲の途中の静かな部分で、わずかに、その先のフレーズが先行して聞こえてる?
ま、まさか、マスターテープが巻いてある時に磁気が写ってしまったとか????
リマスターで聞こえてきた細部、ゆえに判明したものでしょうか。
自分の空耳ならいいのだけれど、何度きいてもそう聞こえてしまう丁度1分ぐらいのあたり。
その後も何度か・・・聞こえちゃってるような・・・。
もしも、マスターでの問題なら、この歴史的記録の保存として
なんてことをしてくれたんだ!とい嘆きつつ星3個。
すご
★★★★★
その場で、見たかったという感じの臨場感を感じるもので、12時間聞き続けてもまだ平気っという感じです。
このライヴと同じアレンジで…。
★★★★☆
LIVE AT SUGAR HILL,SAN FRANCISCO
ぜひ効き比べて頂きたいです。
こちらもライヴです。
「Great American Song Book」ファンには新鮮なCarmen McRaeのフレッシュな
歌唱もさることながら、日本ではほぼ無名なVictor Sproleのベースが素晴らしい。
アフロアメリカン系ベーシストのバイブルとなっている一枚。
チャック・ドマニコにとってもお手本です。