「授業の理論と実践」の融合
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学校の特色づくりや学校評価、授業評価が盛んに行われている。また、教師の指導力
形成や教員養成が教育改革の課題になっている。中教審においても私は、教育改革に
おける評価研究、特に授業改善の重要性を指摘した。言うまでもなく、教育の神髄は
日々の授業である。指導力のある優れた教師、成果の上がって学校、どれをとって
も、基本は授業の質の向上であり、それを企画し、デザインする教師の力量次第であ
る。こうした課題を真正面に据えた研究の成果が公刊された。
「理論と実践をつなぐ知のコラボレーション」という副題の付いた本著は、日頃か
ら教育現場と連携を取りながら研究を進めてきた、教育心理学と教科教育学の専門家
たちが書いたものである。「授業の理論と実践」の融合がますます求められている現
在、タイムリーな本が出たと思う。
たとえば、編者の高垣氏は「新しい授業理論の構築」において、学習者の理解過程
の解明に注目をし、学習者が単に与えられた情報を受容するのみではなく、いかにみ
ずからの持っている概念を組みかえたり修正したりしながら、新しい情報を既有の枠
組みと調和させていくのかについて論じている。また、「授業を分析する」を執筆し
た山森氏は、多様な個人差を持ち合わせた学習者が、教師やほかの学習者とかかわり
合いながら、日々学習活動を営んでいるという視点から、授業を分析する手法の開発
について論じている。
授業研究を軸として、評価に関する総合的な研究を開始する私の研究所の研究プロ
ジェクトにとっても有益な手引きとなり,また,各学校の先生方にとっても日々の授
業改善の拠り所となる好著が世に出たことを歓迎したい。