大地のうごめきが暴かれる
★★★★★
動かざること山の如し・・・古来より伝わるこの諺は、現代科学という剣を以て覆される。
「風化」という現象について、すでにいくらかは知られていた。本書はそこからさらに、現実の地形というものが風化にどう支配されるのか、という難問に踏み込んでいく。それに留まらず、風化を受けた岩石が次に向かう現象、「侵食」という地形の「うごき」を、現場の観測でいかに捉えるか、そして何がどのようにその現象を支配しているのか、というエキサイティングな問題に果敢に挑んでいく。
物凄いヴォリュームがあり、読み応えは誰しも充分に感じるだろう。
そして、豊富な図面もさることながら、わかりやすい文体で読者を、地形プロセス学という挑戦の最先端に誘(いざな)ってくれる。
また、より基礎的な内容となる山崩れ・地すべりの力学―地形プロセス学入門を併用すれば、本書の理解度も一層深まるだろう。
山は、動く。それは人の目に直接的には見えなくとも、最新鋭の観測技術と、洗練された観察眼とにより、客観的事実として明らかにされるのだ。そして、なぜ、どのように地形は変化するのか。本書はその一端を丹念に紐解いてきた著者の足跡であり、また同時に地形学の更なる飛躍への滑走路である。