優れた研究教育実践書!
★★★★★
本書に目を通すと,十年ほど前に著者の講義を受講したときの内容が多く含まれている.国内外の自身の研究事例を挙げながら,「地形プロセス学研究の原点は地形をつくる材料(岩石や土壌)の性質を把握することであり,それを出発点として考える」と教授されたことや,実験・演習問題を通して,手作りの教育を心がけていた当時の著者の様子が鮮明に思い出される.本書はその講義ノートをベースとして書かれているとあるが,内容には,全く古さを感じさせない.それは地形学にとって本質的に重要な事柄が述べられているからであろう.本書は著者の研究者としてよりも,むしろ教育者としての真の姿が表現されているすばらしい研究教育実践書である.アイデアと情熱にあふれた著者が執筆した本書は,地形・地質に携わる研究者や地形学を学ぶ学生だけでなく,地学や自然地理学を教える教員の方にも一読してもらいたい良書である.