とはいえバロンはとびきりすばらしく、ヘイデンのよく響く低音にシングル・ノート・ラインを乗せることを選んでいる。そしてヘイデンは、テンポが最も遅くなったときでも躍動感をあたえる独創的でときおりダブル・タイムになるフレーズを次から次へと続けている。また、まばゆいばかりの「Very Thought of You」のイントロの幻想的な半音階でさえ音数は抑えられている。ヘイデンは音数が少ないほど多くを物語ることができるのだ。不必要な音は一音もなく、無用なフレーズは一節もない。ヘイデンの伴奏は最小限の基本和音と最低限のビートだけで構成され、ソロ・パートでも飾り気のないメロディーを聴かせる。
本作の各曲は曲を展開させるのに十分な時間をあたえられ(7曲で計70分)、そのおかげで静かな緊張感、それにときおり高揚感を漂わせる音楽が生まれている。ここにあるのは、街中であれどこであれ夜ふけに耳を傾けるには最高の音楽だ。(Stuart Broomer, Amazon.com)