「未熟な者」さんご指摘の通り……
★★★★★
……CD1のトラック1の0'18から0'19の編輯処理は、リゾナンスを考えても確かに詰まった感じで、やや雑駁ですね。せっかくの全集ですから、どうせなら楽章毎採り直して欲しかったなぁ。音楽の休止は、意外と人間の生理と深く関わっているようで、例えばブルックナーの交響曲など、全休止がたっぷりしてないと、ぼくはイライラします。
ま、それはともかく、ぼく的には初めて買う全集ですが、小編成を生かした、響きの結晶度の高い、なかなか聴き応えのあるものだと思います。拍手からもこじんまりしたホールでの親密感がよく伝わり、雰囲気のある演奏ですね。少しずつ聴き込んでいきたい全集です。
シュトゥットガルトのモダン楽器の室内楽オケを基本に、部分的にピリオド的アプローチを行っていますが、ハイドンの交響曲全般、極端にティンパニィや金管群が活用する訳ではないので、例えば同じ試みによる、ジンマン=チューリヒ・トーン・ハレのベートーヴェン交響曲全集ほどピリオド・アプローチは目立ちません。ジンマンのピリオド・アプローチは速いテンポと相俟って大変キビキビした緊張感を醸し出していて素晴らしいと思いますが、ハイドンの場合「まったりしたい」と思うと、余りにピリオド・アプローチが前面に出るよりも、このくらいの折衷感の方がぼくは安心して聴けます。逆に物足りない方もいらっしゃるかも知れませんね。ピリオド・アプローチが大好きな方は、古楽器の演奏で聴かれるのがいいかも。
チェンバロが入るチャーミングな響きも特筆されると思います。こうしたアプローチは、マッケラス=プラハ室内管弦楽団のモーツァルト交響曲全集(テラーク)でも行われています。興味のある方はぜひお聴きになってみてください。
尚、ご指摘のある他の3枚(CD19、21&28)の編輯ミスに関しては、正常盤が添付されています。
最良のハイドン交響曲全集
★★★★★
残念な編集ミスについては、他のレビュアーの方々がご指摘されているとおりです。購入された方は、メーカーのホームページに記載されている方法で交換品を入手してください。また大手のCDショップなどでは、すでに交換品が添付された形で売られているところもあるようです。
それはともかく、演奏の内容についてです。どうもこの全集はフィッシャーやドラティに比べて低く評価される傾向があるようですが、私はこれら三種の中では、この全集の演奏が一番気に入っています。むろん、これだけの曲数があると、曲によって多少の善し悪しはありますが。まず、録音が非常に鮮明かつ繊細で、とてもライブ録音とは思えないほどです。それから速い楽章を比較的遅めにし、遅い楽章を比較的速めにするテンポ設定の傾向。私は少なくともハイドンやモーツァルトの演奏では、このようなテンポ設定を大変心地よく感じます。オーケストラのメンバーの中では、木管楽器陣の音色の美しさと歌いこみの巧さが特筆に値します。管楽器のソロも多いハイドンの交響曲では、これはとても重要なことでしょう。
以上のような理由から、私としては初めてハイドンの交響曲全集をどれか一つ購入しようという方には、この全集が最もお奨めと考えます。
3つめのハイドン交響曲全集Get!
★★★★☆
3つめのハイドン交響曲全集Get!です。
LP時代にドラティの全集について「空前絶後の企画」と言われていましたが、フィッシャー盤とこの全集を加えて3つも手元にあります。
ただ、前のレビュアーさんも指摘されていますように編集上の欠陥があります。
2009年11月第一週に以下のように公式にアナウンスがありました。
CD19 Track12「SYMPHONY NO.54 IN G MAJOR:4TH MOVEMENT」 5分42秒〜5分47秒 音とびします
CD21 Track3 「SYMPHONY No.60 IN C MAJOR:3RD MOVEMENT」 3分50秒〜3分52秒 他の曲が挿入されています
CD28 Track12「SYMPHONY NO.83 IN G MINOR:4TH MOVEMENT」 3分48秒〜3分58秒 空白部分があります
メーカーで交換してくれる手続きが始まっています。
もう一箇所だけ私には気になるところがあります。
CD1 Track1 0分18秒のところで本来ほんの少し間があるところが続いて演奏されているように聴こえます。
編集上の欠陥とアナウンスもなくどなたも指摘をされていないようなので演奏上の解釈なのかもしれません。
演奏も録音も優れたものと思います。私の好みではフィッシャー盤の全集がやっぱり一番で次がドラティですね。
いろいろな演奏でハイドンの交響曲が聴き比べ楽しめてすばらしいです。
編集ミスが残念
★★★★☆
演奏そのものはすばらしい。102番では弦が控えめな代わりに金管を大胆に目立たせて面白い効果を挙げていたり、曲ごとにいろいろ工夫があり、全体的にゆっくりしたテンポが、ハイドンの音楽そのものを味わうのに適していると思いました。しかし残念なのが編集ミス。某掲示板でも指摘されていたましたが、これまで見つけたのだけで、CD20の60番の第三楽章における第五楽章の一部(?)の混入、CD19の54番のフィナーレの最後の乱れ、CD28の83番のフィナーレの終わり近くの空白と、三カ所ありました。これらのCDはぜひもう一度出し直して欲しいと思います。
個性的で素晴らしい全集!
★★★★★
度重なる発売の延期で随分待たされましたが、2009年のハイドン没後200年を飾るに相応しい素晴らしい全集だと思います。ハイドンの交響曲全集としては初の全曲録音を行ったドラティ、実直で端正な演奏が印象的なフィッシャーの録音がありますが、今回のD・R・デイヴィスの録音は過去の全集録音とは一味違うアプローチの個性的で新鮮なハイドンを聴かせてくれます。最近はモーツァルトやベートーヴェンの交響曲をピリオド楽器(古楽器)で演奏、録音されることも多くなってきましたが、基本的にデイヴィスはモダン楽器を使用しているものの、ピリオド楽器の演奏解釈を所々に入れて、ハイドンの交響曲をモダン楽器で聴き慣れた聴衆にも新鮮に聴こえます。弦楽器のヴィブラートは抑え、トランペットとティンパニーはピリオド楽器を使用。チェンバロの効果も印象的です。好みもあるのでしょうが、繊細で緻密な趣のあるモーツァルトの交響曲はピリオド楽器。おおらかで明るい響きのハイドンの交響曲はモダン楽器が向いているのかな?と思っています。一概に結論は出せませが‥。他の全集録音との比較ですが、ドラティ盤はテンポも速くアグレッシブな演奏。フィッシャー盤は堅実で素直な演奏。ドラティ盤は私的に「落ち着きのない」演奏に聴こえてしまいます。ハイドンの音楽そのものの素晴らしさを聴きたいならフィッシャー盤を選んだ方が間違いないと思います。ドラティ盤は無意味ににエネルギッシュで作為的に聴こえ違和感があります。フィッシャー盤が地味に聴こえるという方にはデイヴィス盤が面白く聴けると思います。オケの響きもキレイだし、ライヴ録音特有のほど良い緊張感も心地よい。デイヴィスの指揮もテンポ感覚も絶妙だし、緩急を巧みに操る手際よい指揮ぶりもお見事! この低価格でこれだけの名演奏を聴けるのは滅多にないことだと思う。ハイドンイヤーに多くの方々に聴いてもらいたい全集です。