アマゾンレビューの書き込みの質と量を見ればよくわかるが、吉本の最もよい仕事に属するかと。文庫として併収されてる他の論文は別として、マチウ書(新約マタイ福音書)のイエスの語録を論じた表題作に限定するが、古代のユダヤ人共同体から西欧社会に至る、歴史的、精神生活の中心的問題を、戦後、わずかな参考書を片手に日本人が、これだけ高度な内容で評価して見せたことは現在も驚嘆に値する。ある宗教的出版社から、西欧思想の主だった『大審問官』論を集めた本も出ているが、ここまで硬質で高度な原理的水準で、ナザレのイエス出現の世界史的意味に肉迫した文章はない。ゆったりとした日曜日(ユダヤの安息日に由来する)を選んで、何度でも入念に向かい合って読んでみるしかない。内容が内容なので。

マチウ書試論を読んで何ヶ月か、自分が何をしているかよく分からない時間を過ごすことになりました。頭の奥をずっと鳴り響いている音が続いたのを覚えています。この本を読んで以降、この本の読書体験以前と以後で確実に自分の生活史が区切られたことは確かなことです。
著者は、病床の中でこの書を書いたといいます。見田宗介さんの『社会学入門』の中に本書と並べて論じられている書物にロレンスの『アポカリプス』（現代人は愛しうるか：黙示録論）をあげていますが、ロレンスもまたやはり死の間際に書いたといいます。
傑出した力を持つ人間が、ある特殊な条件下においてのみ書くことができるであろう、何がしか特別な作品のひとつであると思います。

マチウ書試è«-ã‚'、吉本最高の書と言う人も多い。それには、以後はダメだという含みもあるのだが。ã"ã"でキリスト教のマタイ伝ã‚'もとに、吉本は思想的人物類型ã‚'作りだã-ている。ã"ã"で提起されている、「é-¢ä¿‚の絶対性」という概念が、後に「時代と言う作è€...がいる」というように、ä»-è€...が消去されてã-まうというような柄谷行人による批判があった。「転å'è«-」は、転å'ã‚'、「æ-¥æœ¬ã®è¿'代社会の構造ã‚'、総ä½"のãƒ"ジョンとã-てつかまえそã"なったために、インテリゲンチャのé-"におã"った思考転換」と定義ã-ている。そã-て二つのタイãƒ-に分ã'る。一つは「上昇型のインテリゲンチャが、見くびったæ-¥æœ¬çš„æƒ...況ã‚'絶対に回避できない形で眼の前につきつã'られたとき」、二つは「æ-¥æœ¬åž‹è¿'代主義にとっては、自己のè«-理ã‚'ä!¿ã¤ã«éƒ½åˆã®ã‚ˆã„ç"Ÿæ'»æ¡ä»¶ã•ãˆã‚れば、はじめから、転å'するå¿...要は無い」。どちらがどうなのか、確かめる余裕は私たちにあるだろうか。