ベトナム・ハノイの三姉妹が、母の命日に集まった。彼女たちはとても仲がよく、どんなことでも語り合ってきたが、それぞれ姉妹にさえ話せない、恋の秘密を抱えていた…。
『青いパパイヤの香り』で、そのデリケートな映像センスが注目されたトラン・アン・ユン監督作。不倫、妊娠、浮気などなど、さまざまな恋愛の形が、しっとりとした映像の中で上品につづられる。女性なら、3姉妹の誰かに自分を重ね合わせてしまいそうだ。
3女を演じたのは『青いパパイヤの香り』など、ユン監督の映画には欠かせない女優トラン・ヌー・イエン・ケー。無垢(むく)な彼女の存在感が、大人になっても少女のような恋をするヒロインにピッタリ。ベトナムの街を美しく切り取った撮影も見事だ。(斎藤 香)
ユン監督のアジアナイズな感性がユニークに現れた作品。
★★★★★
アジアの美しさ、アジアらしさ、をムンムン感じさせる
よい映画だと思います。
監督は小津安二郎からもインスピレーションを
うけているとのことなので、それっぽい構図だなあと
感じさせるシーンもあって、なかなか興味深い映画です。
私がすごくいいなあと思える点が以下。
■三姉妹の会話
家事をしながら何気なく話し合う風景。
「種はどうするの?すてるの?」「ネギ買うの忘れた」
「お兄ちゃんに買ってきてもらえれば?」
「もっと母からお料理習えばよかったと思う」
「そんなことないわ。美味しいわよ」
「お兄ちゃん、ワインもっと飲む?」
「お昼たべすぎた。お腹いっぱい」「あたしも〜」「夕飯はゆでたタニシだけでいっか」
(日本だと“お茶漬けでいっか”みたいなかんじ?)
といった台詞がすごく印象的です。
(ちょっとシモネタがはいった会話よりずっとセクシー)
日本でもこういう何気ないところに、女性らしい感性が現れたりしますが、
あながちベトナムでもおなじ感覚なのかもしれないですね。
■カフェで居留守をつかってしまう、三女の彼氏
この彼氏役の男性が、とても美男子です。いや、美男子に撮られています。
斜め上から見下げた感じでうつっているのですが、
まつげが長く、きりっとしており、それでいて若くみずみずしく、
あやうい感じをよく捉えています。
静かな映像が多い作品ですが、このシーンも含め緊張感だけは失ってない
ハリが感じられて、素敵です。
■寸止め(?)な不倫関係(?)
次女の旦那が、小説のネタ探し+ちょっとはめはずしたい(?)衝動に
かられ、リゾートホテルに行くシーン。
ホテルでいいなあと思える女と出会い、部屋にさそわれるものの・・・・。。
おやっ!、そこで「終了」ですか、とおもえる意外な展開に。
あの微妙な寸止め感も少々アジア的だといえましょうか。。。
(ちょっとした“心まどひ”みたいな)
いくらフランスで育っているとはいうものの、
それでも物こころつくまではベトナムで暮らしていたユン監督ですから、
芯の部分はやっぱり東洋のお人、と思わされる演出に思わず共感。
そんな演出から、東洋人にしかつたわらないだろうなあ(西洋人が見たら
エキゾチックとかいう、変哲ないヘタな言葉であらわされるのだろう)と思える
ユーモアなんかも汲み取れて、すきな映画です。
ウォン・カーウェイ監督常連の撮影監督も協力しているせいか、
映像もほんとうに素敵です。
ベトナムが舞台のフランス映画
★★★★☆
内容は、どうということはありません。ベトナムを舞台にしたフランス映画、といった感じです。監督が、フランスに亡命したベトナム難民とのことで、それも納得です。
他の方も書いていますが、映像がとてもきれいです。湿度の高さに、同じ東洋人として肌がほっとする感じがします。本当のベトナムは暑いはずですが、この映像を見る限り、少しひんやりしています。
音楽もよいです。特に、民謡なのでしょうか、女性が歌う歌が私は好きです。
ゆったりと流れる時間が、心地よく感じました。
心地良いスローな映画
★★★★☆
料理にスローフードがあるように、映画にもそのようなジャンルがあるとしたら、
この映画はまさしく、スローなムービーだと思う。艶を含んだパステルカラーの
シルクのアオザイの肌触りや、初めて口にしたフォーや生春巻きの食感といった
味わいの映画である。
三姉妹が母の命日に料理を作る「起」から、母は最期に父以外の名を呼んだという
「承」に移り、不倫・浮気・妊娠といった話題に「転」じていくのだが、そこから
穏やかに「結」ぶあたりが、トラン・アン・ユン監督のアイデンティティである。
村上春樹「ノルウェイの森」の映画が、広報発表では来月からクランクインされる。
このトラン・アン・ユンが監督で、日本人が演じるという。 大いに期待したい。
まさに今、自分が必要としていた映画
★★★★★
実はうつ病を患っている者です。
だいぶ症状は改善されてきていて、DVDも観られるようになりました。
そして今、抽象的な表現ですが、精神的にとても身体全体が「水」を求めている感覚がして、この映画はほとんど予備知識なしで観ました。
この映画は、あるインテリア雑誌に紹介されていたのがきっかけで購入しました。
夜に一人でみたのですが、まさに今・・・自分が求めていた水のもつ柔らかさ、激しさ、そして激しくないカット割、登場人物たちの生き様・・・まさにこういう映画で癒されました。
最近は、いわゆる「ヒューマンドラマ」映画でも、アメリカ映画ではドラマティックな展開が挿入されていて、それすら受け付けられないほど、疲れている自分にようやく気がつきました。
(だからといって「ディープ・ブルー」のようなドキュメントは苦手)
ベトナムは、「水曜どうでしょう」のラストの企画で、大泉洋と鈴井貴之がカブでベトナム縦断したのを観ていたので、大まかなイメージはありましたが、この映画はそういうリアルな部分ではなく、ベトナムの持つ美的・・・耽美なエッセンスを凝縮した映画でした。
何度も繰り返しますが、この映画に出会えてよかったです。
こういう映画、いくつも観てみたい。
ちなみに、この監督さん、村上春樹氏の「ノルウェイの森」の監督なんですよね。
個人的には「ノルウェイの森」の映画は失敗するだろう、と思っていたのですが、この映画をみて、この監督なら、期待できるかも、と俄然見たくなってきました。
村上春樹氏も トラン・アン・ユン監督が好きだ、ということで企画が実現したそうですが、原作の持つ繊細さ、喪失感をどう表現するのか、とても楽しみです。
なんとなく東洋な 異国な香り
★★★☆☆
抒情的なムードで描かれる3姉妹の物語
全体的にたんたんとした展開で進んでいくのが
なんだか一昔の映画のよう。
愛と不倫は、どこの国でも永遠のテーマなのかも
ベトナムの淡い色合いと間に挟まれる歌が
なんともゆっくりとした映画・・