病人にやさしい呼吸法と瞑想法の教科書
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マサチューセツ大学のストレスクリニックでの臨床経験にもとづく呼吸法と瞑想法の指南書です。慢性疼痛、不安・うつ、心身症的な側面を持つ慢性疾患など、幅広い症状を改善するための具体的な方法論が、8週間のトレーニングメニューとして紹介されています。
最近では、精神状態が免疫や神経系の働きに影響を及ぼすことは常識になりつつありますが、精神状態を安定させて脳や神経の活動を正常化させるためには、通常の思考によってはコントロールすることのできない脳の無意識的な活動に訴えかける必要があります。そのための具体的な方法として、古来、呼吸法や瞑想法が有効であることが知られていますが、それらの方法は主に宗教の世界で受け継がれてきたものなので、病気になった人が病院で本格的なトレーニングを受けるは難しい状況にありました。
それに対して、この本では、禅やヨガの呼吸法・瞑想法が臨床経験にもとづく実践プログラムとして紹介されているので、様々な疾患を抱えるごく普通の人にとっても受け入れやすいものになっていると考えられます。やるべきことは具体的に示されているので、禅やヨガの深遠な思想を理解しなければ先に進めないというようなことはありません。また、この本は行動医学の知見にもとづくものだそうですが、具体的な方法論は「白隠禅師―健康法と逸話」と共通する部分があるので、日本人の目からすると江戸時代から伝わる民間療法の一部を西洋の言葉に翻訳したものだととらえられないこともありません。とくに「うつ」の再発防止については、この本の方法をベースにした「マインドフルネス認知行動療法」の有効性が臨床実験によって証明されています。
この本の良いところは、患者の自助努力を重視する基本スタンスにあります。病人にとって問題なのは治るか治らないかではなくて、病気による苦痛が人生を送っていく上での障害になるかどうかです。たとえ苦痛があったとしても、それと共存していく方法が分かれば、苦痛は苦痛でなくなってしまうのかもしれません。そのことは、「厄介事だらけの人生を生きていく(Full Catastrophe Living)」というこの本の原題にもよくあらわれています。
現在のところ、いわゆるストレスで体を壊した状態は「うつ」と診断されるのが普通ですが、自分は「うつ病」とは違うのではないかという疑問を抱いている方には、この本と白隠禅師の本に加えて「うつは「暗示」で追い払う (健康人新書)」「本当に「うつ」が治ったマニュアル (健康人新書)」「「うつ」を克服する最善の方法 (講談社プラスアルファ新書)」などが参考になります。ストレスとは何かと考えると答えが出ませんが、ストレスと付き合っていくための処方箋はここにあります。
医学関係の人、うつ病の人達に読んで欲しい本です!!
★★★★☆
外国人の友達からの勧めで購入しました。特に「死にたい」と思っている人には効果的な本です。
それから医学関係の方々特にお医者さんにも知って欲しい。「マインドフルネス」というものを。
人それぞれ感じ方があるので「ん??」と思うこともありました。そこは飛ばして読みました。
私自身うつ病と闘病中です。
この本は値段は高いけれど私の人生の教科書です。
行き詰ったときに読んでいますし、いつも手元に置いています。
下手な心理学関連の本を沢山買うよりは断然いいです。
平易で実用的なストレス低減法の手引き
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上座部仏教において伝統的に伝えられているヴィパッサナー瞑想法は、心身と外界との調和をもたらし、日常のストレスへの対処の仕方が身について精神的な健康に役立つなど、さまざまな点で現代の心理療法と共通点があり、医学界の深い関心を集めている。
本書は、本格的にこの瞑想法を学んだ経歴のある精神医学者である著者が、その医学的なエッセンスを万人むけのストレス対処法としてまとめたものである。
仏教的な文化背景や宗派思想的なものに関心がある人には物足りない部分があるかも知れないが、宗教色を排して、セラピーとして瞑想法を取り扱っている分だけ、万人むけで実用的だという利点がある。
本書では「ボディ・スキャン」「静座瞑想法」「歩行瞑想法」など数種類の瞑想法が紹介されている。それぞれの手順やその意義の詳細な解説が親しみやすい語り口で述べられ、テキストとして非常によくまとまっていて初心者にもわかりやすい。
また、ヴィパッサナー瞑想と対になる「慈悲の瞑想」についても言及されており、著者の仏教的なものへの理解の深さもうかがわせる。
瞑想中に突き当たる疑問や、必要な心構えについても、読者の身になった立場で書かれているので、一通り読み終えた後も、ことあるごとに参考にしている。
数多いマインドフルネス(ヴィパッサナー)関連の本の中でも、最も過不足なく基本が押えられた一冊だと思う。
なお、本書で紹介されている数々のメソッドは、ゴエンカ氏などが指導している伝統的なミャンマーやタイの瞑想法と共通したものなので、ヴィパッサナーをはじめてみたいという人はまず本書を読んでやり方を身につけたあと、それらの仏教的な本にも手を伸ばしてみるのもいいと思います。