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弥勒の月 (光文社時代小説文庫)

価格: ¥600
カテゴリ: 文庫
ブランド: 光文社
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何かしら心に引っかかること ★★★★☆
江戸時代、同心の木暮信次郎と岡っ引の伊佐治が
身投げ、病死、殺人事件を追う物語。
伊佐治の常識人(?)としての目線で語られる。

信次郎は頭が切れ過ぎ、世の中に不満を持つ。
その信次郎の心の中の描写に興味を覚えた。

日常生活で何かしら心に引っかかることは、
その人の心の根幹に関わっていることだと
教えてくれているような気がする。
生き直す、ということ ★★★★★
 小間物を扱う「遠野屋」の若おかみ、おりんが川で溺死した。自殺か他殺か、はっきりしない。それが事件の発端である。
 事件を追うのは、北常町廻り同心木暮信次郎と岡っ引き伊佐治。二人は、駆けつけた遠野屋清之介の様子に尋常ならざるものを感じとる。
 信次郎は言う。
<「おれは退屈してたんだ」
  (略)
 「親父のように生きて、死んでいくのかと思うと退屈で堪らなかったんだよ」>
 路傍での父の死にざまは、信次郎の心に深く刻まれ、信次郎は、蛇のようだと評される、有能だが酷薄苛烈な同心となった。その信次郎が、なりゆきもわからぬうちに、遠野屋を評し、<「あれは、おれの獲物だ。おもしれえ狩りができるかもしれねえ」>とつぶやく。伊佐治は、そのような信次郎に、深い危惧を覚えながらも目を離すことができず、行動をともにする。
 遠野屋が並み以上に商人たらんとしていることは明らかだった。闇の出自を持った武士が、商人として、人として、生き直そうとしていたのだ。
 遠野屋は、遠野屋の先代とおりんに恩があると告げながら、伊佐治に言う。
<「わたしにとって、おりんは、弥勒でございました」
「弥勒……」
「そういう女でございましたよ」>
 伊佐治は思う。
<おれも救われたのだ。女に救われ何十年という年月をともに生きている。おれは共に生きている、しかし、遠野屋は失った。縋った指の間から、確かに掴んだものが消えていったのだ。その焦燥、その絶望、その地獄。>
 信次郎も遠野屋も、心の中に余人に窺い知れないものを抱え込む。互いに共感と反感がないまぜになって交錯する。何気ない対面が、言葉と所作のぎりぎりの対峙へと変貌する。
 おりんは何故死なねばならなかったのか? 挟箱の奥深く隠された朝顔の種にはどんな意味があったのか? 遠野屋の闇の出自とは? 様々な謎が徐々に明らかになっていくにつれ、茫漠とした問いが立ちあがってくる。人が人として生きるとはどのようなことか? 人は何によって、人としての矜持を保ちうるのか? と。
屈託を抱えた男たちの姿がこの上なく魅力的 ★★★★★
「あさのあつこの時代小説」?などと
疑って掛かると、見事に足をすくわれる傑作。

まず特筆すべきは、キャラクター造形の鋭さと深さ。
屈託を抱えた男たちの姿をこの上なく魅力的に描いている。
もちろん時代物としての背景や
捕物帳としての魅力も十分。
切れすぎる男たちが魅力的 ★★★★★
タイトルにひかれ、あさのあつこさんの時代小説というのに興味をもった。その興味は間違いなかった。
主人公の信次郎がとても新鮮だった。切れすぎる頭脳をもてあましながらも事件解決にその頭脳を駆使し冷静で鋭い判断を下す有能な同心であるのに、世をすねたような時には残虐的とも言える冷たい言動をとってばかりいる。
そうかといえば、奥深くにはほんの一瞬もかい間見せないが正義感と人情も持っていたりする。だからこそ同心稼業を続けているのであろう。
そんな信次郎と水と油、鏡の表と裏のような存在の遠野屋。複雑な過去を持ちながら、切れ者の商人として人生を生き直している最中にかけがえのないものを亡くし、どうしようもない喪失感を感じながらも表に出さず静かに這い上がろうとする。
お互いに自分を見るような、でも見たくないような決して相容れない二人。でも気にせずにはいられない。
どうにもアンバランスな主人公がとても魅力的だ。どうにも危うい二人を追わずにはいられない。
アンバランスな二人の支点のような伊佐次親分。仮に親分がいなくても、二人が実際に狂気に走ることはないだろうが、二人の引き立て役としてなくてはならいない存在であり、特に信次郎はうとましいと思いつつも苦言を呈してくれることをうれしく思っている節もある。
事件解決していきながらも、いわゆる捕り物がメインではない。人の計り知れない心の奥底を映し出す男たち苦悩と再生の物語。
決して押し付けがましくなく、静かに心を捉えて読む手を止められない。
ちなみに、続編の「夜叉桜」もタイトルや装丁が美しいだけでなく、同じく読まずにいられない作品となっている。
読み応えがありました ★★★★★
作者の名前は知っていましたが1冊もよんだ事はありませんでした。が時代小説との事だったので読んでみると
とにかく面白かったです。いっきに読みなんと続編続々編と読んでしまいました。