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夜叉桜 (光文社時代小説文庫)

価格: ¥700
カテゴリ: 文庫
ブランド: 光文社
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弥勒と夜叉の間に ★★★★★
 元武士だが人には言えない過去を持つ、やり手の若き小間物問屋の主、遠野屋清之介。人を厭い、人に倦んだ、腕利きの同心小暮信次郎。若い頃はいっぱしの悪であったが、今は周りから信頼され頼りにされている岡っ引きの伊佐治。この三人が互いに惹かれあい反発しあいながら、物語は進んでいく。
 かつて生き方を変えるきっかけともなった言葉を発した相手が、清之介を、夜叉の、鬼の世界に引き込もうとする。今は無き女房おりんを思いつつ、清之介は言う。
<「今の……この日々は、人として生まれたからにはおもしろく生きてみろと、女房が手渡してくれたものでございます。その意思に背く気はさらさらございません。(略)」>
 弥勒と呼んだ女を自死によって失ってなお、このときにこのように言い切る姿は感動的である。
 伊佐治は言う。
<弥勒にも夜叉にも、鬼にも仏にもなれるのが人なのだ。身の内に弥勒を育み、夜叉を飼う。鬼を潜ませ、仏を住まわせる。>
 この伊佐治の述懐は、急峻な尾根伝いの道を歩いているかのごとき信次郎や清之介の思いを受け止めるにふさわしい深さをもつ。とはいえ、このような述懐を持つに至らざるを得なかった人間もまたまっとうとは言えないだろう。
 語る視点が三人の間をめまぐるしく飛び移り、しかも回想の場面が、頻繁に挿入されている。決してわかりやすいというような語りではないはずなのにそれを読むものに感じさせない。それどころか三人の心のそれぞれに歪といっていいのか、伊佐治のことも含めてであるが、いわく言い難い心がつくり上げる世界を描くのに大いに効果をあげている。
震えるほど魅せられる一冊 ★★★★★
このシリーズが著者唯一の時代物とは思えないほど
時代小説としてのテクニックと風格に溢れ、
また探偵もの、捕物帳としての魅力も十分に兼ね備え
しかしその外見の魅力以上に、時代や世間に抗い
屈託を抱えた男たちのざらざらとした内面の描写に
震えるほど魅せられる一冊。

シリーズものの続編にありがちなパワーダウンや
荒い筆致など見受けられない丁寧な仕上がり。
文句なしの傑作。
震えるほど魅せられる一冊 ★★★★★
このシリーズが著者唯一の時代物とは思えないほど
時代小説としてのテクニックと風格に溢れ、
また探偵もの、捕物帳としての魅力も十分に兼ね備え
しかしその外見の魅力以上に、時代や世間に抗い
屈託を抱えた男たちのざらざらとした内面の描写に
震えるほど魅せられる一冊。

シリーズものの続編にありがちなパワーダウンや
荒い筆致など見受けられない丁寧な仕上がり。
文句なしの傑作。
白刃で切り結ぶような葛藤劇 ★★★★★
あさのあつこは「葛藤」を描く作家である。
好きだけど嫌い。自立したいけど甘えたい。嫌悪しているのに惹かれてしまう。離れたいのに離れられない。死にたいけど死にたくない。
人の心は、このような理不尽に満ちている。アンヴィバレンツ−相反する感情の同居は、人間の本性かもしれない、と思う。

アンヴィバレンツは必ず葛藤を伴う。あさのあつこは、その葛藤状況を犀利に描き出す。
見てほしい。この物語の主人公主従、同心・木暮信次郎と岡っ引き・伊佐治の間柄ですら、アンヴィバレンツと葛藤に満ちているではないか!
あさのあつこが思春期の少年を描いた物語を多く書いていることは当然である。思春期こそ、アンヴィバレンツと葛藤が、もっとも先鋭に、もっとも赤裸々に表れる時期だからだ。

本書において派手な「立ち回り」はほとんどない。主人公が刀を抜くことさえない。
しかし物語は緊張に満ち、ページを繰る手が止められないほどだ。
登場人物の抱える深い葛藤が、彼らの対峙を緊張感に満ちたものとするからだ。

なお、ご安心いただきたいのは、読後感は、決して悪くはない。本書が葛藤とアンヴィバレンツによって破滅する人間の物語であると同時に、その克服と回復の物語でもあるからである。
i love asanoatuko ★★★★★
弥勒の月・・・・読んでいないので=悲しいです。
このお話しは、江戸の町で起こった殺人事件についてなんですが、奥が深い・・・。
自分なりに「この人が犯人かな?」って想いながら読んでいてもつぎにはあっさり裏切られて・・そのうちに誰が犯人なのがわからなくなってしまうんです。あさのさんじらすのうまいですね>>最後に犯人が分かったときには同情しそうでした。
現代の世の中にも漂っている、恨み・ねたみ・悲しみ・すべてが感じ取れる作品でした。
皆さんもぜひ読んでみてください。