サイケデリックな悪夢
★★★★★
人生とはサイケデリックな悪夢なのでしょうか。
帯のコピーに
「10光年のはるか彼方から鈴木いづみが還ってきた。静謐な絶望のうちに激しく愛を求める
魂を描いた自伝的長編小説。衝撃の自殺から10年、希望を抜き去り、あっというまに絶望ま
でも明るく抜き去った、’70年代最速のサイケデリック・ヴィーナス、鈴木いづみが還って
きた。ニセモノを見極め、かつ楽しむことができた醒めた目は、とれかかったつけまつげの
奥で何を見つめていたのか。’70年代から現代を照射する、いづみファン待望の著作集 」
とありますが、私はこれ以上のことを語る言葉を持ちません。
青春の残影
★★★★★
自分がまだ中学生だったころ、村上春樹でゼルダ・フィッツジェラルドを知り
瀬戸内晴美で田村俊子を知り、高村光太郎によってその妻智恵子を知った。
そんな彼女らの切なくも情熱的な人生に憧れていたころ一人の女が天界に旅立った。
彼女の存在を知ったのは去年のことで、それから憑かれて色々追い掛けている。
と、いうわけで鈴木いづみさんの自伝(?)「ハートに火をつけて! だれが消す」・・・。
これ読んでみるととても二十数年前に書かれた小説とは思えないほど表現方法が新しい。
男に時間を盗まれたとか上手い表現で。
他人から見ればだらしなそうな生活も生きていた彼女の視点から見ると刹那的で泣けるのだ。
それでも人生は彼女に二者択一をせまり偶然に選んだかのような人生よりも
失った可能性に、焦がれる。
彼女よりもずっとくだらない人生を送っている自分もそうなんだから。
最後に未練のあった昔の男とはかない再会をして心が救われるところでこの小説は終わる。
たぶん彼女が自分で納得しようとした人生の意味あいで。
自分が大事で、でも他の人間を切り捨てられなかった女の最後の独り言だ。
憎らしいほど、あい・らぶ・ゆー
★★★★☆
羨ましくて、羨ましくて憎らしくなりました。
短くてもいい。やかれるような日に生きたい。
小指がちょんぎれるぐらい激しくやりあいたい。
・・・ワタシにはできないから。
だからとっても羨ましくって、憎らしい。〆
誤解していた
★★★★☆
鈴木いづみを知ったのは阿部薫経由だった。作品は読んだことがなく「阿部薫と一緒に薬物にでも耽っていたんだろうな」などと勝手に想像していた。しかし、鈴木いづみは阿部薫のことを好きでもなく、その異常な愛情を憎んでいたんだと。それにしても、これを読むと阿部薫の負のパワーは凄まじいと思った。憎んでいても自殺前には「薫が呼んでいるような気がする」と言っていたそうだ。死してなおも負のエネルギーを送っていた阿部薫。
この作品では何かに怯えるように理論武装をした阿部薫と対比するルイズ・ルイス加部の存在がひとつのテーマなのだろう。絶望を受け入れ自然体でいるルイズ・ルイス加部が非常に魅力的に書かれている。この中では阿部薫に小指を切断された左足をジョエル(ルイズ・ルイス加部)に見せるシーンが印象的だった。それを見たジョエルの反応。
私ぐらいの世代だと、美少年時代のルイズ・ルイス加部は知らない。ジョニー、ルイス&チャーで見たときは既に髭面のオジサンだった。今なら、30才手前だった加部のカッコよさも理解できるが、当時、中学生の目線ではそれは理解できなかった。まして、GS時代の人気ぶりは知る由もなし。
この本を読むとルイズ・ルイス加部の存在はGSでも特別のものがあり、当時の少し尖がった少女達にはその存在が非常に魅力的に映っていたことが分かる。実際に魅力的な存在だったのだろう。
阿部薫とルイズ・ルイス加部という存在を知っている自分には興味深く読めた作品だった。
いづみの自伝
★★★★★
これは自伝に近いです。
最初はジュン(夫の阿部薫)に出会うまでの派手な生活。
後半は阿部との結婚生活、そして彼の自殺、、、。
狂ってます。
でも静かに狂ってる。
切ないけど、冷静に墜ちていく自分達をみつめつ筆者がいます。
最後にジョエルと再会するところがすきです。
ジョエルは、ザ、ゴールデンカップスの加部さんだそうです。