5年後から見る「ライブドア事件」
★★★★☆
2009年現在、この本を読むと、「ライブドア事件」(または、六本木ヒルズに代表される金融業界)は
1つの時代の分岐点となっていたことを実感させられる。
もちろん、現在でも当時と同様のお金にまつわる狂騒が繰り広げられているであろうが、ライブドア事件が1つの臨界点であったのではないかと感じられる。
本書は、ライブドアを含め、楽天や村上ファンド、リーマンブラザースやゴールドマンサックスといった企業が、当時の金融界や放送界でどのような役割を果たしていたのかが詳しく取材されており、当時のヒルズに集まっていた「熱」感じることができる良書である。
よく書いてくれましたが
★★★☆☆
ここまでよく書いてくれたと思いますが、グッと踏み込んだところがないので迫力不足という指摘は否めないでしょう。焦点が絞り込めていないので読者としてはだらだらと読まされてしまう感があります。
こうしたルポは、内容が面白ければ、それが第一に重要なことですが、朝日新聞関係の出版物としては日本語の用法に間違いが数ヶ所ありますし、文(文章ではなく)としてバランスの悪いものが散見されます。
ヒルズは虚塔
★★★★★
一時期、成長企業はヒルズへこぞって移転していった。
それ程、ヒルズに会社を構えることはステイタスであった。
しかし、そのヒルズを舞台にライブドア事件以降の惨事は起こった。
ライブドアの検証はもちろん、村上ファンドについての記述がおもしろかった。
村上はなかなかの世渡り上手だ。
ライブドアは村上に裏切られ、そして村上も国策逮捕された。
サブプライムローン問題でもそうだが、資本主義至上主義が根悪だと解される
ことが最近多い。
本質はもっと深いのではないか。
資本主義は、金を稼いだ者勝ちではない。
続「メディアの支配者」・・・
★★★★★
中川一徳氏の傑作「メディアの支配者」の続編として読むといいです。戦後のドタバタから身を起こした「梟雄」鹿内信隆のメディア帝国の顛末が一望に俯瞰できます。ニッポンの「戦後」と「現代」を読み解く最良の教科書になるでしょう。
サブプライム時代の現在に本書を読むということ
★★★★★
サブプライム問題で未曾有の金融危機を迎えている下で本書を読むことには意義がある。
本書の主役は ライブドアや楽天といったIT業界の雄だ。しかし裏の主役もきちんと書き込まれている。それは 村上ファンド、リーマンブラザーズ、ゴールドマンサックス、大和SMBCといった金融機関だ。一連の買収騒動の中で 資金を出し 誰よりも資金を回収したのは 金融機関ではなかったか?村上ファンドこそ 堀の中に転落したが その陰で うすら笑いを浮かべる人たちが居たことを本書はそれとなく書いている気がした。
IT業界は赤字でも上場できる業界だった。実績はなくともVISIONを語ることで そのVISION自体に値段が付いた時代があった。但し かようなVISIONの底の浅さと未熟がバブルであったこともその後の歴史である。
その中で ライブドアや楽天は 卓越した能力を有したが 本書で描かれる彼らは決して新時代のVISIONを実行し達成していくヒーローではない。むしろ 各種金融機関に唆されて 金融機関の用意したマネーゲームに嵌まっていく犠牲者である。
そんな罠を作りあげた金融機関が 日本という小さな島国の小さなITバブルだけで満足しているわけでもなく かくて米国、欧州を舞台としたサブプライム問題を引き起こし 見る見る潰れていっているのが 現在である。世界恐慌以来の危機と言われる今 本書が描き出す「黙示録」は すでに小さい事件のような気がする。但し ライブドアが一時代を築いたことは 歴史としては紛れもない事実であり 彼らを拍手喝采し その後 引きずり下ろした人たちがいたことを踏まえないと その後の時代が読めないと思う。