インターネットデパート - 取扱い商品数1000万点以上の通販サイト。送料無料商品も多数あります。

堕ちた翼 ドキュメントJAL倒産

価格: ¥1,575
カテゴリ: 単行本
ブランド: 朝日新聞出版
Amazon.co.jpで確認
企業倒産処理の正統か、異端か ★★★★☆

     後世顧みて、JALのケースは我が国の企業倒産処理の歴史の一大転換点と位置付けられるかも知れない。 企業倒産は、当事者の重要な意思決定の経緯が往々にして厚いヴェールに包まれ、関係者以外は内実を窺い知れない部分が多い。 本書は、そうした外から見えにくい部分にも踏み込み、紆余曲折を経てJALの破綻処理スキームが固まっていくプロセスを克明に描いていて、第一級の史料的価値がある。

     本書にあるとおり、当初JALの経営問題への対処としては、銀行債権者全員の同意を前提とした私的整理が模索されてきた。 だが、9,500億円もの債務超過に陥り、公的資金投入も不可避なJALの破綻処理に当たって、純資産のマイナスを埋めるのに株式を充当しない私的整理では、会社債権者と納税者に対する説明が到底つかない。 こうした利害関係者間の公正・衡平を考えたとき、破綻処理スキームとして更生手続を選択したのは妥当だったと言うべきである。

     ただ、更生手続に代表される法的整理を採用した場合、会社更生法などの倒産法が定める原則的取り扱いに従って、金融債権とともに燃料等の商取引債権や航空機のリース料債権の支払いが裁判所に差し止められ、航空会社としてのオペレーションが止まってしまうという深刻な事態が懸念された。 もしそうなれば、JALのキャッシュフローを生み出す力は確実に弱められ、顧客基盤も失われていくので、破綻処理のコストは──従って、投入される公的資金の規模は──必然的にかさんでいく。

     実際には、現在継続中のJALの更生手続において、こうしたオペレーションの停止は起こっていない。 会社更生事件を管轄する東京地裁民事8部が、商取引債権・リース料債権について更生手続によらない随時の弁済を許可する決定を下しているからであるが、この決定の根拠となる会社更生法の規定(第47条第5項)を素直に読む限り、債権額に応じて平等に取り扱う倒産法の大原則の例外が許されるのは、弁済される債権が「少額」の場合に限られる。 この規定を根拠に「全ての」商取引債権・リース料債権の随時弁済を認めた東京地裁は、かなり思い切った決断をしていて、裁判所がどのような議論や悩みを経てこの決定をしたのか、本書の緻密な取材の中に東京地裁の動きや企業再生支援機構との交渉の内情も含まれていれば、倒産内幕ものとしての完成度は一層高くなったと思う。

     法的整理における商取引債権の随時弁済については、JALの場合はスポンサーとなった企業再生支援機構が支援決定の条件としていたからこそ許容されるのであって、一部の金融債権者にだけ不利益・不平等な取り扱いを同意なく強制することには、原則としては慎重であるべきというのが、法律学者の一般的な評価のようだ。 JALは言わば異端のスキームという訳だが、企業にとって商取引は、大口になればなるほど自社の事業基盤の不可欠な要素となる。 オペレーション停止に伴う事業価値の毀損を最大限回避しつつ利害関係者の間の公正・衡平を図る倒産処理はどうあるべきなのか、今後の実務の蓄積を注目したい。

     なお、本書の帯には、「会社更生法申請から現在までの軌跡を辿り」とある。 2009年9月に前原国土交通大臣が設置したタスクフォースの私的整理案が、関係者の思惑の錯綜からお蔵入りとなり、替わって法的整理が浮上し更生手続開始の申し立てに至る一連のプロセスこそが本書の最大の見せ場なのだから、この文句は本書の内容を正しく示していない。 帯の文句を考えた担当者が本書をきちんと読んでいない証左であり、こんな宣伝をされたら著者が気の毒だと思う。



続編を希望 ★★★★☆
JAL問題はJALはもちろん、政治家、国交省、財務省、銀行、企業再生専門家など取材対象が多岐にわたる。多様なニュースソースから個別に流れる記事をたどっても、破たんに至る道筋が見えにくかった。著者は利害の絡まる複雑な事象をひとりでカバーしたからこそ、より全体像に迫れたといえる。簡単な年表や人物相関図などがあれば、より理解を助けるだろう。著者の取材から逃げ回ったのか、幾人かのキーパーソンの肉声は取れていない。JAL問題は終息からはほど遠い。続編を期待する。
新聞では分からない内幕情報が満載の一冊! ★★★★★
昨年来、大きな動きのあったJALですが、本書ではJALが法的整理を経て
今日に至る過程を克明に描写しています。

とは言っても、新聞で報じられているような表面上の出来事の羅列ではなく、
JALを取り巻く利害関係者の心情にまで深く踏み込んだ取材が為されており、
ノンフィクションながら小説を読んでいるようです。

JAL問題に関心のある人はもちろん、企業ノンフィクションを普段読まない
方にもお奨めの一冊です!!

ビジネスの未来予測の格好のテキストがでましたよ! ★★★★★
この本は、JALだけについて分析していると思ったら大間違いだ。JALテレビ、JAL住宅、JAL自動車と、10年後の日本が直面する企業に共通する構造問題を指摘しているようだ。大鹿氏なら、この本の視点で、他の業界も鮮やかに切って見せ、問題を提示することができるだろう。「いかがなものか」などと腕組みして思考停止しながらエリート面をしている経営者、学者、ジャーナリスト、その他の面々は10回ぐらい繰り返して読むべきだろう。「市場原理主義に基づく改革は悪だ」という日本の論調に、海外のビジネスマンは驚きを通り越し、無視し始めた。情緒的に居直る延命主義はビジネスばかりでなく、日本の政治や社会にはびこるガンである。読者も横並びで「お手々つないで沈没」がイヤならぜひ一読してほしい。他のJAL本を圧倒する内容で圧巻です。