カラーで見たいコミック。
★★★★★
少女漫画のキャラクターは苦手なのですが、
読み始めてすぐに、ささやかな嬉しいカットがあった。
活版所の賃金をもらって、うれしそうに駆け出す場面。
私が勝手に想像する程ジョバンニは悲観にくれているわけではなく、
目の前の喜びに素直に反応する男の子。
子供の健やかさがわかる、原作最終形態の中でも大好きな場面なのですが、
さらりとかわす作品が多いなかで、忘れずに描かれていました。
その他にも原作を忠実にトレースすることに専念した気配が全編に感じられます。
出版社や担当から無理強いされた訳ではない、
北原文野さん自身が「銀河鉄道の夜」をよく分析していることがわかる仕上り。
小さな文庫サイズが、繊細なタッチをより印象付け、
「カラーで見たい」と思わせるページも多数あります。
そして、感傷過多にさせない、潔いラストカットも見事。
絵柄に対して好き嫌いはあっても、
漫画家さんの真摯な仕事ぶりには、誰もが賞賛できるはずの佳作です。