レトリック論の全体が見たい人に良い書
★★★★★
レトリックというものが、論文のような文献からでは断片的にしか理解できず、結局何を問題にしている学問なのかがどうしてもつかめなかったところを、この本が見事に整理して全体像を見せてくれた。
まえがきにある問いかけに編著者の方々の志を感じてこの本にいっぺんに引き込まれ、興味のある3章から5章を読んだところだが、異なる学問の立場に立てばレトリックにはこんなにたくさんの語り方があるということ、そしてどんなアプローチも許容するレトリックは実に懐の深いものだということがよくわかり、新鮮な驚きと感動があった。
レトリックを既に熟知している人にとっては物足りなく感じられることもあるかもしれないが、「レトリック論を学ぶ人のために」というタイトル通り、この学問の入り口にいる初学者を導くには非常にわかりやすく、程よく広く、程よく深い良書ではないかと思う。