たとえば「反省しないアメリカ人」の章では、アメリカ人も反省はするがそれを表に出さないこと、謝る習慣がないこと、無意識に自己弁護することなどを指摘。アメリカ人部下には謝らせて責任を問うよりも、問題の原因を追究するという姿勢で臨むのが得策だとし、そのための英語表現を紹介する。
本書では、こうして読み解いたうえで、今度は「無口な日本人」「会議が苦手な日本人」というように日本人も俎上に載せる。1つの切り口から、会議の役割、信頼関係の構築、意思決定…と多彩にテーマを広げ、最後には雇用訴訟や従業員流出防止策などの実務的なトピックもカバーする。
これだけ日米の違いを考慮した有効な解決策を示せるのは、日米のビジネス文化やマネジメントに精通する著者ならではだろう。その、フェアで合理的な視点は好感がもてる。なにより「直属の上司の頭越しに訴えてくる従業員をどうするか」といった、知らなければこじれさせかねない問題の対処法を教えてくれるのが貴重である。
読んでいるうちにこれは、若い新人社員など「異質」に思える人材の管理にも通じることがわかる。異文化マネジメントのトレーニング書としておすすめだ。(棚上 勉)