しかし、これがどうもよくない。
ともすれば乗客の、乗務員に対する不満に流れたり、(例を挙げると、機長が流した「故障を修理したので飛べると『思う』」というアナウンスに、乗客が不安を抱いたくだりがある)またある場面では乗務員の英雄譚に流れがちであったりと、前作が持つ冷徹なまでの客観性が失われているのが残念である。
また、複数の人物からの証言が断片的に繰り返し書かれているので、前作での特色であった「一貫した時間軸」が失われている。すなわち、起こったこと!を理解する上で、読む側が頭の中でテープを巻き戻し・再生する努力をしなければならない。
さらに、各章の冒頭にある事故の概要では、肝心の「何が事故の原因であったのか」ということが書かれていない場合が多いため、しばしフラストレーションを覚えることがある。
どう考えても前作より多くの労力と時間がかけられていると思われるがゆえに、読み物として中途半端になっていることが残念である。