履歴書の趣味欄に「散歩」と書く男が読んでみた
★★★☆☆
東京を中心舞台に据えたマイノリティあふるる散歩記である。東京生活者で、さらに泉麻人の行動圏内とリンクする部分が多くて、それなりに土地勘がある方が読むと格別の面白さがあるのではないでしょうか。本書が書かれた90年代初等でさえ、「もうあのお店はなくなってしまった」「バスがキリキリと家屋の軒先を突き進んでいた道が拡張されてしまった」等の感慨を著者は抱いているのだが、さらに10年が経過した2004年・晩秋に読むとさらに感慨が深まるのではないだろうか。町とは生き物である。姿を変えるのが世の常。
路地から路地を軽い迷子感覚で彷徨うのは、スリリングで楽しい散歩の醍醐味のひとつである。ぼくは学生時代の4年間、京都でそれを著者のように満喫した。本書でもちろりと京都が登場するが懐かしかったです。