コルトレーンの最高傑作 比類なき構成と荘厳
★★★★★
このレビューの引用元: A Love Supreme [12 inch Analog] (LP Record)
数あるコルトレーンのアルバムの中で、最も完成度が高く彼の精神性を象徴した作品を選ぶとなるとこの作品しかないであろう。コルトレーンの固体進化論で言えば、55年のマイルスとの出会いによるマラソンセッションをはじめとする一連の吹き込み。57年の一時解散によるモンクとの出会いとブルー・トレイン、58年のソウル・トレインという成果。同年にマイルスの元に戻ってからのモードの追求。ここではもちろん59年のカインド・オブ・ブルーが一つの成果となる。独立後のアトランティックでのジャイアント・ステップスという最初の頂点。インパルス移籍とこのアルバムでの最大の頂点。その後、アセンションに見られるニュー・ジャズへの移行と晩年のスピリチュアルな演奏。そして67年に早すぎる死が訪れるわけだが、こうした求道的ともいえる彼の短期間での成長と完成を見るにつけなんだかつらくなってくる。それゆえヒューマンなコルトレーンが伝わってくるバードランドでのライブ、さらにバラードやジョニー・ハートマンとの共演が、愛されているのにはそれなりの理由があってのことだろう。正直な話、僕自身最も好きなコルトレーンのアルバムは別にある。しかし、たとえ辛くとも、我々はコルトレーンの業績と精神性の高さを直視しなければならない。そして、掛け値なしにすばらしい彼の最高傑作「至上の愛」を時に耳にしなければならない。内容への多言は要しない。比類なき構成と荘厳な精神の発露がここにあるのだから。