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時間と存在

価格: ¥2,310
カテゴリ: 単行本
ブランド: 青土社
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知覚的存在と意味的存在の「重ね描き」そして無脳論 ★★★★★
「私」が、私秘性により、内に心・意識(そして自我・脳概念)という鬼子を制作した。
同時に、外に風景(世界)の私有化を図り風景の強制的内在化が始まった。世界の対象化(主客の誕生)である。
この時、感覚的性質(色・味・匂い等)は剥ぎ取られ心・意識に帰属させられる。
そして、世界には幾何学的性質と運動のみが残された。(自然科学的世界像)
大森荘蔵は以上のような主観・客観そして因果的理解を倒錯であるとする。
この「因果構図」に替わるものとして「重ね描き」構図を考え、そこから必然的に無脳論も導き出される。

「重ね描き」構図は、自我中心主義の解毒剤として爽快ではあるが、人間中心主義の限界は免れ得ない。
著者が晩年暗黒を覗いたという意味のことを語ったということを読んだ記憶があるがそういうものだろう。

ブッダはパーリ語でタタター、つまり修業の結果としての「あるがまま」を説いた。
それは、私秘性以前の風光を指しているに違いない。「ただ」の世界であり、いわば「縁起」構図である。
ここまでいかないと平安はないだろう。
健全な精神を蝕む哲学の陥穽を見る ★★☆☆☆
1985年に出版された『知の構築とその呪縛』が面白かったので、「知の構築」がどこまで進んだかに興味を持って本書を読んだ。しかし残念ながら、9年間で著者は呪縛に捕らわれてしまったようだ。
「はじめに」で、著者は“二千年来、無数の哲学者や数学者が検討したゼノンのパラドックスのトリックを見つけようとして、ことごとく失敗し、…(中略)…、この歴史的事実から、一転してゼノンの議論は詭弁でない、ゼノンは正しいのだと、今こそ結論してよい時期に来たのではないだろうか。”と主張するので驚いてしまった。

トリックには、物理学で考えられる永久機関(錯覚で熱力学法則を否定するトリック)と、哲学で用いられる詭弁(言葉で矛盾を隠す論理のトリック)がある。これらのトリックに共通なのは、「人間の意識や注意をローカルに集めることで、グローバルな観測ではあり得ないことが成立する」という誤認識を与えることである。
例えば、p.33の「飛ぶ矢のパラドックス」の第3段を著者は否定するが、第2段の仮定がトリックであることを見抜く必要がある。すなわち、矢が飛ぶことを「一瞬の静止」と捉えることが間違いであり、トリックに呪縛される瞬間である。
同様に、p.67の“点Xが点Aと同一の点だということに他ならない”という曖昧な定義もトリックになることを見抜く必要がある。この定義が曖昧なので、“木の葉が緑から赤に変わるのは同一の木の葉が色という付帯的属性を変えからであり、…(中略)…点運動は複数の同一点が存在することになるので矛盾である。”という結論(知への‘盲目’の愛)が導かれる。

『知の構築とその呪縛』の書評で指摘したように、「同一性」の説明や「知覚因果説」を否定するための論理展開で示された新たな「知」が構築されていれば、「知」を偽装したトリックに呪縛されずに済んだと思われるのだが。
唯脳論への反論 ★★★★★
時間についての論考から始まり、重ね描きという概念を用いて、これまでの存在論、実在論がはたせなかった新しい世界観の提案が、本論文集でなされる。これまで、幾何学の非実在性、脳と意識の関係のあいまいさに悩んできた人は、ぜひ一読をされたい。所要時間、机にすわって、2時間x3週間。