分館人類学めいた自分語り以外は大変におもしろい、深く広い築地のすべて
★★★★☆
本書の欠点は、最近の文化人類学のはやりっぽい自分語りの部分で、それはうっとうしい。またレヴィ=ストロースだギアーツだと名前を出してくる割にそれらが何の意味もない場合があるのも時に辟易。しかしそれを除けば、非常におもしろい。日本人が知ってるつもりながら実はよく知らない築地市場について、なぜ仲買人は符丁を使うのか、内部でのゾーニングはどうなっているのか、歴史は、その利権は、はては漫画などに見られる築地市場のイメージは、などありとあらゆる側面から描いてくれるし、また多くの場合には挙げられている経済学や人類学の研究論文が、ちゃんと築地のある側面を理解する助けとなっている。外国人の目が有効に機能した好研究。移転前に是非一読を。