自己とは何か
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妊娠した恋人の堕胎費用を工面するため駆けずり回るマチウ。
何ものにも隷属せず、何も決断せず、全ての行為がその場限りで完結する
ボヘミアン的自由を追い求めた彼も、初めて自らの人生というものを意識し始める。
今まで信奉してきた「自由」は、果たして本当の自由だったのか?
頭をもたげたその疑問は、彼のアイデンティティを揺るがせ、
「自己とは何か」という問いかけを喚起する。
最終場面で、行為による自己の投企こそが自由の本質であると気づいたとき、
彼に執るべき行為は何も残されておらず、空っぽの自己に直面する。
その時マチウは永すぎた青春と決別し、今や自分が「分別ざかり」であることを
認めることになるのだ。