カッコよい
★★★☆☆
「スカイ・クロラ」シリーズの2冊目。
ヒロインは、
生きることに対して、人間特有の意味を持たせず、
社会に溶けこみつつ、動物としての自分の感覚に忠実に生きている。
ストイックでクールなそのふるまいは素直に「カッコよく」感じるが、
深淵なペシミズムと死の匂いがする。
うっかりすると引き込まれてしまいそうだが、
一歩距離をあけると、美しい物語として楽しめる。
時間がある時に続編も読んでみようかな。
馬鹿野朗!可哀想なんかじゃない!
★★★★☆
前作【スカイ・クロラ】シリーズの第二作。ストーリーは前作よりも数年遡った頃を描いている。
始め主人公が一人称【僕】を使い、やたら僕、僕言うので主人公は男なもんだと思い込んでいた。だが途中で主人公が前作にも登場した主要キャラクターの【クサナギスイト】だと解ると面食らってしまった。そういった一方的な決め付け(女の子は僕とは言わないもん)などが要するに大人のエゴなのだなと実感した。
でも、作中でクサナギは自分が女である事を毛嫌いしている節がある。にも関わらず、ティーチャを見る目が尊敬や憧れから、ほんの僅かな恋心へ変わってく。これは戦死したヒガサワの感情が乗り移ったような不思議な描き方をしている。
その戦死したヒガサワを見ていた野次馬が「可哀想に」と口々に言い。それを「馬鹿野朗。可哀想なんかじゃない。」と一蹴するシーンは特に印象的だ。
鮮烈に蘇るその姿を
★★★★★
時系列順でいえば最初に当たる作品なのですが、多くの方は「スカイ・クロラ」から読み進んで来られたのではないでしょうか。
斯く言う私もその1人でした。
当然の如くクサナギの過去を紐解く事を欲していた私には堪えられない作品です。前作では垣間見る事の出来なかった過去の一端が、自らを「僕」と呼ぶクサナギ自身の視点で語られてゆきます。
「読み出して広がる世界にワクワクする」と言えば少し語弊があるかもしれません。 が、最初に読み進むときの気持は正にそんな感じでした。
クサナギの視点を通して観る世界。
先ずその事で変にテンションが上がってしまうのです。
実際、クサナギの空での素顔やティーチャとのやり取りは初々しいと表現したくなる様なモノです。ササクラとのコミュニケーションをしてる姿など目を細めて見たくなる程の魅力に満ちています。(個人的にササクラにはシリーズを通しての助演男優賞を差し上げたい!)
今作の魅力を1つ挙げるなら思春期(!)のクサナギの気持が直に伝わる感覚。それこそが今作のキモと言う気がします。
後々のクサナギとの対比で鮮烈に蘇るその姿を。
読み返す度に、強く感じずには居られない。
私にとってはそんな作品です。
大人と子供の境界線
★★★★☆
信じる神を持たず、メカニックと操縦桿を握る自分の腕だけを信じて、戦闘機乗りを職業に、戦争を日常に生きる子供たち。地上を厭い、空でしか笑えない「僕」は、飛ぶために生まれてきたんだ―大人になってしまった「彼」と、子供のまま永遠を生きる「僕」が紡ぐ物語。
「戦う理由があるから、これだけ大勢が、これだけのエネルギィを使って、準備をして、苦労をして、命をかけているのです」
スイット引き込まれる。
★★★★★
無味、無色、無臭。
そんな感じさえ与える世界観。
言い方を代えると
非常に乾いた大陸の草原のような感じの世界観といえるかもしれない。
けれども、空中戦を描写するテンポ、話の展開のメリハリ。
どれも、理系的に計算されているような印象を与える。
頭の良い著者の世界に、すーっと引き込まれる。
このシリーズに共通する一貫した世界観が、読者に上質の楽しみを
与えてくれる。
著者に感謝。