昆虫の作る巣の中でもっとも優美なものは?
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この巻は、ハチが主人公。キゴシジガバチがなぜ、人家の中、マントルピースにまで巣を作るのか。ファーブルは、この巻でも進化論を批判しつつ本能の不変の特性を主張します。しかし、本能も、ガチガチの融通の利かない特性ではなく、生命を維持するのに営巣のためのエネルギーを節約するという融通さも兼ね備えていると考察します。その事例に人間と共生しているツバメやスズメの営巣などを参考にします。この辺りでは、現代の進化論にも少し踏み込んでいる感じも。
8〜9章では、綿毛を巣作りに使うモンハナバチと樹脂を使うモンハナバチを比較して、それらを形態だけで同一の属にしている分類学に異を唱え、機能を考慮して2分すべきだと主張しています。現在から見れば、それは先進的な主張を含むとともに観察力の限界をも示しているのですが、あくまでも観察し実証したことを確信を持って主張するファーブルの姿勢はこの巻でも不動です。
なお、この巻では、輝くばかりの純白の綿でできたモンハナバチの巣が、昆虫の作る巣の中でももっとも優美なものである、と美をうたっています。美をうたうような記述には今までの巻ではお目にかからなかったように思い、印象に残りました。