新書なので掘り下げは期待しないでね、でも面白いよ
★★★★☆
私鉄ファンにとっては、新書なのに幅広く文献を漁って書かれており、引用も的確であり、観光案内も充実しており、便利な本。物足りない場合には、巻末の参考資料へ当たれば良いから、入門書として優れている。ひとつ残念に思うのは、阪急と東京宝塚劇場、東宝と日比谷の関係について言及した部分。小林一三は東京電力の前身の会社の社長を阪急社長と兼務していたことがあり、その当時東京電力の余剰地(日比谷に発電所があった)を劇場街に転用したことに触れていない。京王の項でも説明されているように、昔は配電と電車とは関係が深かったのだ。
ちょっと「ひねりすぎ」のような気が・・・
★★★☆☆
日本の私鉄モデルを作った阪急、国盗り物語を思わせる歴史を持つ東急、独自の沿線文化を持つ阪神や京急・・・JRと違って独自色がはっきりしている私鉄は、その歴史も沿線探訪も面白い。
というわけで本書も当然のごとく購入。
もっとも、読み始めてすぐに著者みずから、
「私はその分野にそれほど詳しいわけではない」
と断わっているごとく、本書はそれなりの好事家を唸らせるには少々力不足。
では、初心者にとって面白いかというと、それも微妙かもしれないというのが正直なところだ。
一つの私鉄について包括的に書くのではなく、ワンテーマを決めてそこだけ掘り下げるというのが本書の基本構成なのだが、どうもそのテーマ設定がある意味「ひねりすぎ」で、「その沿線についてのもっとも面白いところ」を取り出しているように思えないのだ。
それはたとえば西武線と日本アニメ史の関係だったり、京王線を「情けない」といったキーワードでまとめようとする試みだったりするのだが、そういった視点は面白いとして、実際には少々こじつけっぽく感じてしまう箇所が多い。
そのため、マニアには物足りず、おそらく初心者にとってもピンと来ない内容になってしまっている気がする。
視点はいいのに、ちょっとひねりすぎてしまったのかな、というのが正直なところ。
もっとも、それでも本書は面白く読めるのだから、これぞまさに「私鉄のパワー」ということか・・・。
幅広い観点からの「文化史」としての「鉄道会社」史
★★★★☆
広く「公共的な事物」(放送、イベント、鉄道、空港など)について、政治史、社会史、文化史など横断的に論じている著者の、初の著書。
なので、普通の「鉄道本」とは一味違う。
とりあげられているのは、「西武鉄道」「京王電鉄」「京浜急行」「つくばエクスプレス」「名古屋鉄道」「近畿日本鉄道」「阪急電鉄・阪神電鉄」。
新規開通したばかり「つくばエクスプレス」についてのみは、通常の「鉄道本」らしき記述だが。それ以外の歴史ある私鉄たちについては、著者独自の観点から論じられている。
たとえば、京王電鉄における「井の頭線の異端ぶり」。あるいは京浜急行における「空港線の特異な歴史」など。特に後者は、「羽田」という戦後大きく変貌をとげた地域の文化史としても、非常に興味深い内容だ。
また、首都圏以外の路線、「名鉄」「近鉄」「阪急・阪神」等については、その会社がそれぞれの路線内に作った様々な「文化的なアイコン」を紹介し、それぞれの地域文化に「私鉄」がいかに強い影響を与えたかを紹介している。
「鉄ちゃん」もいろいろ
★★★☆☆
最近、ドラマやヴァラエティで取り上げられ、メジャー化を感じる鉄道オタク。
さて、この本の著者はどういう人なんだろうと思い読み進める。内容的には、西武、京王、近鉄など会社別に取り上げた、私鉄会社史、あるいは私鉄沿革史から取り上げたトピックが主体だ。なぜか沿線名所案内も付いている。ライター経験も長いためか、引用が多く比較的さらりとした筆致で話が進められており、マニアックさが感じられないのがある意味特徴か。