はっきり言って超マニア本です
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ポッと出の「鉄子」が書き散らした本だと思ってはいけません。
本書はそんじょそこいらのマニアがはだしで逃げ出すような濃い内容です。
内容は各鉄道事業者の通勤車両を、彼女の中にある見識を元に車両のよしあしや特性を語っているのものですが、ちゃんと足回りからモノを語っているその見識はなかなかのものです。
『理想の鉄道車両は』において、私の理想はスタイルではなく走行性能であると言い切り。その走行性能も単に加速がよくて最高速度が高いのではなく、台車のつくり、保線から論じている。それを踏まえたうえで書く線区における車両を語っているため、たとえば読者と作者の間で見解が異なろうとも「なるほどそういう見方もあるか」と納得がいきます。マニアの中にも鉄道車両をクローズドシステムの中の一要素として分析し、評価できる人間はなかなかいません。
作者は「機会があれば関西編も執筆したい」と書いていますが、読者としてもぜひ期待したい。京阪電鉄の台車における試行錯誤や、山陽電車のMB-3020主電動機を軸にしたシステム構成など、彼女にしか書けない評論をぜひ読んでみたいと思います。
女性ならではの視点かも
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今までになかったタイプの私鉄ガイドブックだと思う。
車輌について、各社の代表選手を選出して解説し、それを足がかりに各私鉄の車輌軍の解説もしている。代表選手の選出基準が非常に明快でリーズナブル。また車輌解説ののレベルも難解すぎず、平易過ぎず。そしてところどころピリッとスパイスのきいた専門用語をふりかけてある。そういうところが何気なく鉄っちゃんゴコロをくすぐっている。
また、本書のユニークにしているのは筆者の主張があちこちに見られる点だと思います。理想の車輌とは、ソフトウェアとはどうあるべき、西高東低と言われるが、それについてどう考えるか、等々。
途中で筆者自ら「鉄子」と書いているのを見て、はじめて女性が執筆していたことに気づいた。そして、この神経の行き届いた書きっぷりと親しみやすさにはいくらか、そのファクターが関わっているのであろうと感じた。