巨匠、横山光輝のディストピアSF
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さぐればさぐるほど知らない作品が出てくる横山光輝先生の作品群。後年は歴史漫画を活動のメインとしていましたが、私にとって横山光輝とは「バビル2世」「マーズ」などを代表とするSF漫画の人でした。そんな横山先生のSF作品のひとつが手頃な文庫サイズで復刻されることは、一ファンとしてうれしい限りです。
健児が冷凍冬眠から目覚めたとき、外界では200年の時が過ぎていた。公害と異常気象で環境は荒廃し、都市はコンピュータとロボットに支配され、わずかに生き残った人間は醜く奇形化し、文明を失っていた。科学の恩恵を再び人間の手に取り戻すため、超能力を駆使して戦う健児。人間は再び光を手にすることができるのか。健児とユミは第二のアダムとイブとなって人間を繁栄させられるのか―――
SFとして古臭さがあるのは事実ですが、凝ったアイディアとスリリングなストーリー展開の面白さは今でも十分感じられます。シンプルな娯楽作品としての体裁を保ちつつ、なおかつそこに未来への警鐘というテーマを乗せることを怠っていないのが流石ベテランの筆運び。横山作品ならではの一流の仕事ぶりがここにはあります。
すぐれたエンターテイナーであり、読んで決して損をさせないのが横山光輝という漫画家です。その王道のSF作品、ぜひ味わってください。