フク・ホロヴァーと、その子孫たちの決して幸福とは言えなかったがゆえにドラマチックな生涯の記述もさることながら、著者がフクの生涯を辿る過程もまた、途切れそうになりながらも繋がりつづけるという絶妙にスリリングさをはらんでおり、飽きさせない。フクが日本との架け橋となったのは、生前よりもむしろ、この著作が書かれる著者の行動力が揮われる過程においてではないかとさえ感じられる。
また、著者の本書執筆の動機が、国際結婚やチェコ、ボヘミアに対するものよりも、「空元気も元気のうち」とばかりぴんと背筋の!張!!った、明治生まれの人間へのまなざしから発しているところがユニークである。