全般的には大変興味深く、間違いなく"ページターナー”。
★★★★☆
昔のちょっと胡散臭そうな伝説的光子物語と違い、もっとリアリステイックな彼女の"現実”が垣間見れ、興味深かった。
自国の人間が海外で活躍したり、脚光を少なからず浴びるのはエクサイテイングな事だろうが、日本人は海外でちょっと活躍した同胞がいると、かなり誇張したエピソードなどを自国に吹聴させる傾向が観られるので、この本を読むと、「やっぱ現実はそんなもんだよな。」と頷ける箇所が多かった。
細かいリサーチがなされているのにも拘わらず、ハインリッヒの死因の真実など、未だ謎に包まれた部分も多いのも読んでいてスリリングだった。
ただ、別の方レビューでも似た様な指摘があったが、筆者の少々誇大な想像による(と取れる)決め付けにしか聞こえない記述が時折目立った。これはあくまで光子さんについての本でなのだから、筆者の個人的な妄想とオピニオンは後回しにしてもいいんじゃ、と言うか、ちょっと主観的すぎると言うか。もう少し客観的に表現して、後の想像は読者に任せていいのでは?と思った。
個人的には、エクセントリックでお金も時間もたっぷりあり、ある意味ぶっ飛んでた西欧貴族男性が超自分好みのエキゾチックで、美人で若いマスコット的妻を極東で見つけ、いくら時代的背景があるとは言え、行動派でも好奇心の特に強い方でもない、はっきりいって外国暮らしはあまり適してなかったタイプの女性を不幸にも?!渡欧さてしまい...でも肝心の彼は若死 しちゃったので、光子は大変だけど子も沢山いるしでどんな状況に陥っても折り合いをつけて生きるしかなかった、と言う感じ。夫も夫で、アジアは彼にとって珍しい興味の対象だったんだろうけど、自分の子達はみな欧州人として育てるなんてきっぱり言ってのけてしまったあたり、結局根底でアジアを下に観ており、今だったら随分傲慢な考えの持ち主になるよな、と思った。このテの欧米人は今でも結構多いが。
心の内を手記などに表してないのは、単にあの時代の日本人はもっとプライベートで、心の内を今の個人ブログの様にオープンに打ち明ける習慣があまりなかっただけじゃないの、と思った。
光子さん自身は尊敬と言うより、可愛そうな女性だったんだな、と思った。