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砂の城―鬼貫警部事件簿 (光文社文庫)

価格: ¥680
カテゴリ: 文庫
ブランド: 光文社
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トリック破綻はあるものの、楽しめます ★★★☆☆
アリバイ崩しがメインの鬼貫警部もの長編。比較的初期の作品で、巻末解説によると、本作の執筆依頼をしたのが中央公論時代の宮脇俊三氏なのだとか。

中身ですが、互いに関係ないように見える二つの殺人事件に、それぞれ難攻不落のアリバイを持っている怪しげな容疑者。所轄署の刑事がさじを投げた事件を、物語も終盤になってから鬼貫警部が乗り出し、次第に犯人を追い詰めてゆく・・・という、典型的な鬼貫警部ものの形である。丹那刑事は出てこないですが、しかしよく考えるとこれはフレンチ警部ものと構成が似ているような気もする。

さてそのトリックなのですが、う〜んちょっとなぁぁ、という感じ。読んでいる途中で、第一のトリックは解決がわかったような気がしてそのまま読み進めていると、ええぇーというような理由でその解決法は却下されてしまうのだ。その「理由」は、現実の事件ならともかく、鉄道アリバイトリック系の本格ものではふつうご法度なのでは?この矛盾をどういうどんでん返しだか解釈で最後に説明をつけるのか?と思って読んでいたが、結局最後まで特段の説明は無し。
うぅ〜む。だってそんな「理由」があったかどうかは、その時点では当の犯人は知る由も無いのだから、そのまま決行したらアリバイ無しになってしまうじゃぁないですか。絶対ヘンだ、と思って巻末解説に進んだら謎解きがありました。(というわけで、この文庫は本編を読む前に解説を読んではいけません。)

トリック破綻は残念ですが、その辺を気にしないで読むならば、文章のこなれ方とストーリ展開の妙は、さすが巨匠ということで楽しめます。まあ、なんだかんだ言って、こういうものもあるということで読んでおくのも良いのでは。
上質で読み応えのあるトラベルミステリー ★★★★☆
鳥取と京都で起こった2つの殺人事件。
それぞれ地元の刑事の捜査で浮かび上がった容疑者は、同じ人物だったが
彼には堅牢なアリバイが存在していた。
行き詰まる捜査の末、鬼貫が登場し卑劣な完全犯罪者の殺人計画と対峙する。

言ってはいけませんが、鬼貫ものの長編の典型的筋立てですけど、
精緻なアリバイトリックも、トリックのための小物配置も非常にバランスよく、
何より鬼貫を含めて執念深い刑事たちの捜査過程が魅力的です。

新幹線も通っておらず、携帯電話もないこの時代のトラベルミステリだけど
古さを、古いと感じさせず、謎とその解明に素直にワクワクさせるものがある。

鮎川哲也氏らしい丹念で、緻密、奇をてらわない純粋なミステリに浸りたい人におすすめ。