もっと気楽にクラシックを
★★★★★
ジャズに関しては多くの関係本が出版されていますが、クラシックを気軽に楽しめるツールは決して多くありません。その中で比較的手軽に読んで楽しめて、しかも散策している感覚にさせてくれる本書は貴重なものと言えます。多くの方への入門書としてお薦めします。
名曲喫茶のゆったりと、くつろいだ雰囲気が素敵な一冊
★★★★☆
学生時代、御茶ノ水にあった名曲喫茶『ウィーン』に足繁く通っていた私なので、東京都内とその近辺の名曲喫茶を紹介した本書の第2楽章「“憩う” 名曲が流れる隠れ家案内」に引きつけられましたね。
まず、店のクラシックな色調と香り、雰囲気を伝える写真が素晴らしい。やわらかな照明の下、磨き込まれた木のテーブルと、座り心地のよさそうな椅子。珈琲の香り漂うなか、ヴァイオリンやピアノ、チェロといった楽器、あるいはオーケストラが奏でる音楽が流れ、それはゆったりと、心を遊ばせてくれそう。
渋谷の『名曲喫茶 ライオン』、阿佐ヶ谷の『音楽とコーヒー ヴィオロン』、高円寺の『名曲喫茶 ネルケン』『高円寺 ルネッサンス』、荻窪の『名曲喫茶 ミニヨン』、新宿三丁目の『炭火焙煎珈琲 ピアノフォルテ』、吉祥寺の『クラシック音楽鑑賞店 バロック』、国分寺の『名曲喫茶 でんえん』、本郷三丁目の『名曲・珈琲 麦』、淡路町の『喫茶 ショパン』、要町の『名曲喫茶 ショパン』、小竹向原の『音楽喫茶 アカシア』、駒場東大前の『カフェ・アンサンブル』、学芸大学の『珈琲と紅茶とバロック音楽 平均律』、大久保の『名曲喫茶 カオリ座』、川越の『喫茶 アマデオ』。
上記、名曲喫茶、音楽喫茶の店内を写したカラー写真が、とても素敵です。ヨーロッパ風っていうのかな。高雅で、香り豊かな雰囲気を湛えた写真の数々。一軒一軒訪ねて回って、クラシック音楽を聴いてみたくなりました。
今年は、ショパンとシューマンの生誕200年にあたっています。本書に案内、紹介されている名曲喫茶で、美味しい珈琲の香りに包まれながら、ショパンの『夜想曲集』を聴いてみる、なんてのもいいですねぇ。学生時代以来の愛聴盤、ジネット・ヌヴーの弾くブラームスの『ヴァイオリン協奏曲』(『名曲喫茶 ミニヨン』 小林眞理子さんの推薦盤として挙がっていたのが嬉しい)の演奏も、こうした名曲喫茶で聴く味わいは、また格別なんだろうな。
古き佳き名曲喫茶
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あなたは名曲喫茶をご存じだろうか? クラシック音楽を流す喫茶店で、客のリクエストも受け付けてくれる。
平成のせわしない時代にもいまだ名曲喫茶は東京各地にひっそりとしかし泰然と存在している。
たとえば渋谷ライオン、高円寺ネルケン、吉祥寺バロック、阿佐ヶ谷ヴィオロン…。クラシックとコーヒーを愛する者たちにとっては至福の空間である。
この本は写真と文で名曲喫茶の魅力を紹介している。この写真がいいんだな。名曲喫茶独特のほの暗い雰囲気を見事に捉えている。
また店主へのインタビューも充実している。「クラシックを好きになったきっかけは?」「あなたにとってクラシックとは?」など店主のクラシック観がわかる質問が満載だ。
名曲喫茶ガイドが主だが、CDショップの紹介もある。この本を片手にCDショップ巡りをし、買ったばかりのほやほやのCDを携えて名曲喫茶でほっと一息コーヒーを飲み、リクエストした曲を聴きながら買ったばかりのCDのジャケットをパラパラ読む…。そんな贅沢な時間を体験してみてはいかがだろうか?
名曲喫茶に行かれたことのない方へ。
そんなに敷居の高いものではありませんよ。大音量でかかっている店もあるので、最初はびっくりするかもしれないが、店主に相談すればきっとあなたの好みに合った曲をかけてくれるだろう。
かく言う僕もこの本に載っているある店が憩いの空間だ。その店はクラシックに限らず、ジャズや洋楽も流している。今日はどんな曲を流しているんだろう?とわくわくしながら店のドアを開けている。
あまり人には教えたくない店なので、店名は内緒だ。そんな自分だけの隠れ家を見つけるためにぜひ手に取ってほしい一冊だ。