もう少し・・・
★★☆☆☆
私は、ランナーという陸上競技を連想させるこの題名にひかれて買ったのですが
題名にするほど物語の中に陸上の事が書かれていなかったのが残念です。
陸上の話。というイメージを持たずに読み始めればまだよかったかもしれませんが・・・。
私的にはもう少し陸上の試合の場面や様子の事が書かれていたらなぁ・・・と思います。
不完全燃焼
★★☆☆☆
出だしでは、スポーツ小説らしい爽やかさを期待しながら、読み始めた。
走ることの美しさ。自分の中の余計なものを振り払い、剥ぎ取りながら、小さな自我の核となる快感。
そして、失敗。再びスタートに立つことへの恐怖感。落ち着かない家庭環境の中での悲壮感。誰かに頼ったり甘えたりすることができず、意地を張るしかできなくて増してゆく孤立感。それでもなお、あきらめきれない。
主人公の碧李の息詰まる心情は、少年を描きなれている作者らしい。
しかし、途中から、作者が女性の書き手であることを強く意識させられた。
陸上部のマネージャーの杏子の、主人公の母親である千賀子の、その情念が際立って生々しく、物語が進むにつれて主人公がかすみそうなほどだ。
そこを踏まえると、この本を、どれぐらいの世代の人に勧めていいものか、困惑する。
少なくとも、スポーツが主題の小説を思って読まないほうがいい。
田中雅美氏の解説によってようやく補完されているような印象が残った。
タイトルが違うのでは・・・。
★★☆☆☆
「バッテリー」、「一瞬の風になれ」を経てこの本にたどり着きました。
タイトルのとおり陸上競技がテーマということで期待しましたが、
そもそもテーマと内容が違うなあということと、
致命的なところは球技であれば「試合」という表現を使いますが、
陸上競技では「試合」という言葉を使いません。
「試合」ではなく「大会(又は記録会)」ですよね。
陸上経験者だとその表現に違和感を感じてしまいました。
悪評でしたが、あさの先生は好きな作家の一人ですので、今度は他の作品を読んでみたいと思います。
テーマが重かったです
★★★☆☆
私も皆さんと同じように、陸上に青春をかけた男子高校生の、心の葛藤や友情、恋などを描いた青春小説だと思って読み始めました。
もちろんそういったものも描かれ、特に主人公が陸上競技の大きな大会で敗北するシーンや、陸上に復帰するべく放課後の校庭で練習を再開する時の情景描写、心理描写は非常にみずみずしく、素晴らしいと思いました。
主人公が関わる人々、ひとりひとりも生き生きと描かれています。
ただ「ランナー」の裏テーマ(?)である、主人公の母と年の離れた妹が抱える問題・・・かなり重いです。
人間の心の深い闇が浮き彫りとなっていて、小さい子供を持つ私には途中、読み進めるのがシンドくなった程でした。
エンディングにはこの問題にも光が射したような形でしたが、実際ならこれで本当に解決されるのだろうか??という疑問が残りました。
あと、陸上に関しても、もう少し成果が目に見える形で終わったほうが、読者としてはスッキリしたかな、というのが正直な感想です。
環境から、そして自分から逃げずに生きようとする主人公に胸を打たれる
★★★★★
皆さんのレビューを見ると賛否分かれていますね。
読む前に求める像によるのでしょうか?
あさのあつこさんの本初体験で、予備知識なく読み始めた私にとっては、とても胸を打つ内容でした。
家庭環境で周りに明かせない事情を抱えていて、陸上をやめてしまった碧季。
でもやめた本当の理由は家庭のせいではなく、自分の逃げだと気づいてやり直そうとする碧季。
長距離走る目的とは、順位とか記録ではない。
自分の背負っているものをそぎ落として、自分自身を見つめること。
そのメッセージをとても尊く感じました。
この本の結びの一行は、「空は今日も美しい」。
スポーツとしての長距離走に焦点を当てた話ではなく、一人の人間としての”ランナー”を描いた小説として、
心打たれました。
友人の久遠、先輩マネージャーの杏子も含め、主人公の成長した姿を、
ぜひとも見たいと思いました。