本書はNHK人間講座のテキストに加筆したもので、聖書やイエスの生きた時代に関して既にかなりの知識を有している人にとっては物足りない分量ではあります。しかし、作家として、そして一人のクリスチャンとしてイエスの生きた時代や聖書・キリスト教の歴史について興味を引くような形で語る筆者の筆力により、一般向けの入門書としてはかなり良いものとして仕上がっていると思います。聖書を黴臭いもののように感じている人も多いと思いますが、この本は2000年前の世界をより近いもの、よりリアルなものに感じさせてくれると思います。そして、現代の人間にとって聖書とは何であるのか、一人一人考える切欠を与えてくれるでしょう。