1960年代の世相を切り取ったルポルタージュ
★★★★☆
開高健の初期のルポルタージュでイスラエル、東西分裂状態のベルリン、ソビエト時代のモスクワ、アルジェリア問題に揺れるパリを訪問して、自分自身の目で視て、聴いて、感じたことが緻密に克明に描かれている。溢れるばかりに臨場感があるのは、開高健が各地で出会った人々に執拗なまでに率直に自分の意見をぶつけて相手の素直な反応を引き出しているからであろう。その当時開高氏が感じたこと、考えたことについて、例えば社会主義に関してもソビエトが崩壊した今となっては必ずしもその通りにはならなかったことも当然あるが、それも含めて時代の雰囲気を味わうことができる貴重な作品だと思う。