「本物の憲兵」というものがわかる。
★★★★☆
先の大戦において「憲兵」というものは、嫌われ者でしかないという見識が強かった。占領地の民衆からも国内でも、そして戦地の友軍でさえも煙たがったものであるというイメージしかなかった。しかしこの書は、そういったものを覆し、また職務を全うし公(おおやけ)のために尽くす公務員としての「兵隊」の姿が見えた。私欲では動かない、我々日本人がいま忘れかけている美しい精神も描かれている。しかもそこには「わざとらしさ」や「いやらしさ」といったものが感じられない爽やかなものがある。極悪非道な軍隊としかイメージを与えられていない旧日本軍であるが、著者のような兵士も多数いたであろうと思う。