美しい響きが聴けます
★★★★★
ピアノ、ヴァイオリン、チェロ、それぞれの分野で活躍する3人による室内楽曲のCDだ。すべてラヴェルの楽曲で構成されていて、まずそこが素晴らしい。普通、彼女たちのように美女3人組で売り出す場合、もっとポピュラーな楽曲を並べるものだ。その結果、Jクラシックの女性演奏者のアルバムは、どれも同じようなものになってしまいがちだ。それ故に、クラッシック初心者の方にはやや取っ付きにくいかもしれないが、ぼくは彼女たちの挑戦する姿勢に拍手を送りたい。
最初のピアノ三重奏曲から、ゆったりとしたテンポで、輪郭のはっきりとした美しい音色を聴かせてくれる。とても丁寧な演奏で、響きも美しい。私は家でこのCDを流しながら仕事をしたりするのだが、諸処に現れる非凡な表現に、何度も手が止まってしまった。レコード芸術誌のレヴューでは、あまりよい評価がもらえなかったのが不思議なくらいだ(中には、リーフレットに3人の写真が多すぎるなどという的外れな批評もあった)。
余談だが、ライヴでも3人の演奏を聴いてきた。日本人同士(というか仲良し3人組)の阿吽の呼吸で、素敵な演奏を披露してくれた。やっている曲はラヴェルというある意味とても個性的なものなので、普通は我も我もという感じになりがちだが、3人ともどことなく控えめで、純和風なまったりとした所作が素敵だった(川久保さんはアメリカ育ちでだが、だからこそメンバーにとけ込んでいうように見えた)。音楽以外の付き合いでも、この3人はとても楽しくできるのだろうな、と思わせるような雰囲気だった。だが、いったん楽器を弾き出すと、すさまじい集中力で美しい響きを聴かせてくれた。