歴史の表舞台に出てこない下級武士や庶民を主人公にして、史実に基づいて書かれた短編集です。
下級武士や庶民を題材にした歴史小説の登場人物のほとんどが、架空の人物であるのに対して、この本に出てくる登場人物たちは無名の人物ですが実在の人物です。
大名や将軍になった英雄・傑物たちの視線ではく、小市民のストーリーがとても新鮮です。
庶民や下級武士を知ることにより、その時代をリアリティのある現実として感じることができました。
ヒーローたちの活躍する舞台としてではなく、匂いも色もある現実として、その時代を感じることができました。
それにしても史料の少ない庶民や下級武士の実話を描けてしまう司馬さんの博識は、驚くばかりです。
しかも講釈じみた史料の引用や史実であることの言及はなしに、実にテンポ良く書いています。
司馬さんのファンであろうがなかろうが、歴史小説が好きな人は必読です。