クレーメルとアルゲリッチの室内楽の最高傑作
★★★★★
1998年5月、すみだトリフォニー・ホールにてライヴ録音。元々この企画を考えたのは、アルゲリッチにとっては40年以上、クレーメルにとっては25年以上マネージャーを務めたラインハルト・ポールセンとのことだ。ただし氏はこのライヴの直前に亡くなってしまった。そのためこのアルバムは氏に捧げられている。
この3人の凄腕を組み合わせライヴでトリオをやる、という発想は既にクラシックの世界の発想ではない。ジャズやロックの世界の発想だ。しかしできあがったこのライヴを聴くと、大して実力もないのに、ジャムったなどと言っている非力なミュージシャンのそれとは異なり、完璧な世界を作り上げてしまう。この醍醐味を知った彼等は実に楽しげでもある。曲もイイ。ショスタコーヴィチのピアノ・トリオ第2番は初めて聴いたがスゴイ曲で驚いた。特に第2楽章がスゴイ。
『ある偉大な芸術家の思い出に』はよく知った名曲だが3人の手にかかるとこうなるか、とただ唖然。もう音に対するセンスがずば抜けている。このライヴには観客として、ウラディミール・アシュケナージやレオン・フライシャー、そしてあの大江健三郎も来ていたようだ。こういう観客が来るというだけでも驚きだ。クレーメル+アルゲリッチの室内楽の最高傑作がこれだと思う。