イギリスの小さな村で起こる殺人事件。語り手は、村の教会の副牧師。その穏やかな語り口で、彼の恋愛模様を交えながら、物語はすすんでいく。などと書くと、星の数ほどあるコージー派ミステリっぽいものかと思われるかもしれません。確かにコージー派にはピッタリの舞台と事件です。が、クッキーに紅茶のコージー派(偏見かなり有り)には決して書けないようなミステリです。
殺人事件をはじめ、こまごまとした事件が何件か起こるのですが、ちょっとズラして(詳しく書くの、やめときます)書いてあって、その技巧に舌を巻き、悪辣と言ってもいいくらいの意地悪さに怒りをとおりこして感動すら覚えてしまいます。その勢いにかられて読み進んでいくと、一番最!後!!にある探偵(これがまた不思議で魅力的(?)な女性)の手記、これにアゼンとさせられます。
最後の最後まで、なんとも人を食ったとんでもないミステリ、おすすめです!
というだけでも、変わっていますが何とも凄いのは筋の外れたところで事件が起きること。誘拐されたり殴り合いがあったりクリケットの試合が克明に書かれていたりしている最中に、脇から死体が転げだしてくるのです。それでいて全くまとまりがないのかというとさにあらず。結局一つの方向に収束してしまいます。どたばたしている内に散会してしまい人がすくなくなってから無理矢理犯人を挙げる解決といい、今までの日本には無かったストーリ立ての傑作です