一般的には8月13日頃、迎え火を焚いて祖先の霊を迎え、
数日後に送り火を焚いてその霊を送り出す、そんな行事です。
きゅうりや茄子に楊枝を挿して牛や馬を作ったりなんて、昨今はとんと見かけませんけれども。
でもそんな昔ながらの風習が、いつしか現実離れしたことになり、
不思議な雰囲気を醸し出しているのでしょう。
がらんとした旧家で、夏の盛りだというのにどこかひんやりとした空気の流れる空間。
そんな家に住む夏宿(かおる)を訪ねた市郎の過ごした数日間を、現代が失くしかけた風習や、
木々の葉ずれが聞こえてきそうな描写と共に綴られる、哀しくも美しい物語。