京都の季節感を感じさせる花にまつわるエッセイ集
★★★★☆
京都の町家在住のエッセイスト・麻生圭子さんによる京都と花にまつわる随筆集です。
京都駅近くにあるタキイ種苗の「友の会会員誌」に2004年から3年間随筆を連載したものを1冊の本にしています。36ケ月分の花と京都の便り、というわけです。
内容は、はる(梅に雪 唇に春、神さまの橋に 神さまの水 光琳梅、水の仙人 雪中花、千年椿 法然院の落椿、白木蓮 半襟のように 古都に咲く ほか)、なつ(座辺に飾るなら 野の花を、五月のカエデ 実相院の床みどり、山の衣替え 苔みどり、蛇の目 雨下駄 あじさい寺、花菖蒲に杜若 平安神宮の夢うつつ ほか)、あき(一日花の木槿に 大文字の送り火、花ひとつの空調 桔梗は心の秋の花、朝顔 昼顔 夕顔の横顔、重陽の菊 満月にすすき、広沢池に緋の結界 彼岸花 ほか)、ふゆ(悟りの窓 紅葉に嵯峨菊、柿からこぼれおちた二、三の話、錦秋 鴨川 流れいく、事始め 餅つき やがて南天の実、京野菜にウメモドキ ほか)です。
イラストレーター・三好 貴子による季節の花々や名所を描いたイラストが本文を引き立てています。文章同様、はんなりとした水彩画の色使いが美しく、声高に主張することなくエッセイに寄り添っています。この二人のコラボによって上品な雰囲気が本書から漂い、読者にとって愛蔵されるのでしょう。
知られざる花の名所をたどるという京都観光のお供にもいいでしょうし、季節感のある日常を送るスパイスにもなり得ます。知っているようで知らない京都の魅力を再発見する切っ掛けにもなるような内容が含まれており、ユニークな企画だったと思います。